『ターコイズの空の下で』外モンゴルでカルチャーショックを経験

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 海外で育ちハリウッド映画にも出演する国際派俳優のKENTAROが、柳楽優弥を主演にモンゴルで撮影した初監督作だ。裕福な家庭で甘やかされて育った主人公が、実業家の祖父に外モンゴルの草原へ送り込まれる。目的は、終戦後に現地の女性が産んだ祖父の娘=主人公の伯母を見つけ出すこと。だから、カルチャーショックをテーマにした典型的なビルドゥングスロマンだ。

 ただし、プリミティブな力強さだけでなく、けっこう仕掛けも多い。主人公のガイド役となるのがモンゴル人の馬泥棒で、異文化コミュニケーションの齟齬が生むユーモアに加えて、突然妄想シーンが入り込むなど先の行動が読めない。しかも、モンゴルでは指名手配されていることが途中で分かり…。単体のイメージが強いビルドゥングスロマンの中に、バディもののロードムービーというヒネリが入っているのだ。

 そこに、外モンゴルの壮大なロケーションとセリフを極力抑えた語り口が詩情をもたらし、現地キャストの生々しい存在感と技巧(大胆な省略やジャンプカット)のギャップなどが相まって、なかなかにユニークな世界観が立ち昇っている。もちろん、主人公と一体となって体験するカルチャーショックは、日本人なら価値観を揺さぶられるくらい衝撃を覚えるはず。留学や海外旅行がままならない今、その代替としてもうってつけの映画だ。★★★★☆(外山真也)

監督:KENTARO

出演:柳楽優弥、アムラ・バルジンヤム

2月26日(金)から全国順次公開

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