<再ブレーク盤>DEEN『POP IN CITY~for covers only~』シティポップの超王道ぞろい

 1993年にデビューし、2018年からはボーカルの池森秀一とキーボード&コーラスの山根公路の2人組となったDEENが、シティポップ・ブームに乗った企画作品。

 CDの全10曲は、海外で大人気の『プラスティック・ラブ』や『真夜中のドア』をはじめ、『埠頭を渡る風』、『DOWN TOWN』などシティポップの超王道ばかり。ジャケットも、大滝詠一『A LONG VACATION』の永井博が手掛けておりファン心理がくすぐられる。何より池森の声が爽快で良い。例えば相手への妬みを歌った『悲しみがとまらない』さえも青春の想い出として許したように聞こえるほどだ。

 個人的には6曲目から9曲目が特に印象に残った。見事なコーラスワークも相まって渚を想起させる『バカンスはいつも雨』、まろやかな歌声が似合う『真夜中のドア』、原曲よりポップな仕上がりの『RIDE ON TIME』、そしてトロピカルな『君は1000%』と続く。ドヤ顔で超絶テクニックを披露するのではなく、聴き手の想い出に優しく寄り添うようなパフォーマンスが彼らの特長だと感じた。

 映像の方は、『このまま君だけを奪い去りたい』『翼を広げて』などヒット曲から、山根が作曲を手がけた近年の楽曲までを披露した2020年のLIVEを1時間ほど収録。初期の高い声を必要とする楽曲を懸命に歌う表情もまたアスリートのように清々しくファンにはたまらないだろう。本作を堪能すれば、海辺でゆっくりと人生を振り返りたくなるはず。

(ソニー・CD+BD初回生産限定盤 6800円+税)=臼井孝

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