スバル・レヴォーグSTIスポーツ EXで、雪を求めて1166kmグランドツーリング

2020~2021日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したレヴォーグでのロングドライブ。かねてからその実力を真に試したくて機会をうかがっていました。そんなところに。週末を挟んだ5日間、とくに乗りたいと思っていたSTIスポーツEXをお借りすることができました。さっそく雪道ドライブプランを練り、北に向かってスタートです。


今回のロングツーリングの大きな目的といえば、あらゆる路面状況でレヴォーグの走破性、走行安定性の高さ、そしてアイサイトXの実力などを確認したいということ。とくに今は雪道も試せますから、日常使いでどんな表情を見せてくれるのかを体験するには最高の時期ということになります。そして、ただ走るだけでは面白くないので、途中に取材ポイントを数カ所設けました。

スタートは東京の恵比寿にある「スバル本社」からです。途中、自宅で雪道走行グッズや車中泊用の寝袋、さらに途中で隙があれば滑る気満々でスキーまでSTIスポーツに積み込みました。そして大切な足元には「ヨコハマ・アイスガードiG60」を装着しています。タイヤのトレッド面を内側で凍結路面やウエット路面における高い接地性、外側が雪上性能を重視した設計になっているバランスのとれたスタッドレスタイヤです。スバルにバランス性能の高いスタッドレスタイヤとの組み合わせと、聞いただけで、すでに「史上最強の組み合わせ」といった心強さにウキウキが止まりません。

さっそく東北道を北上。郡山までは雪の情報がありません。ドライ路面での快適なクルージングが続きます。アクセルを踏み込んだ瞬間から感じる軽さは終始、心地いい軽快感として続きます。相変わらずアクセルやブレーキ操作との高い一体感が生み出すドライブフィールを感じるだけでもドライ路面での走りは「いいなぁ」という言葉が思わず出てくるほど。

さらにスバル自慢の高度運転支援システム、アイサイトXをオンにすれば、車線の中央をビシッと維持できるようにしっかりとアシストしてくれます。ステアリングへの介入ですが国産車としてはかなり強めに入り、安心感があります。時速50km/h以下の渋滞時には両手を離すハンズオフもできます。

ところが今回はあまりに順調で、首都高でさえ渋滞が発生しませんでした。残念ながらハンズオフをあまり体験できませんでしたが、一方でアダプティブ・クルーズ・コントロール(以下ACC)は存分に活躍してくれました。加速や減速のセッティングは本当に自然で、急な動きとは無縁でした。例えば先行車がいなくなったとき、設定速度までフル加速に移るACCは多いのですが、アイサイトはトロくもなく、かと言って一目散にフル加速するでもなく、なんとも絶妙な感じ、まさにいいフィーリングのまま加速していきます。

さらにブレーキングのフィーリングも悪くありません。先行車が停車しようとするときにも急ブレーキのような感じもなく、ごく自然にマイルドに安定した車間を保ったまま減速していくのです。すべての状況で“急”という動きを極力しないようなセッティング。さらにカーブの手前でもちゃんと減速してくれたりする機能など、なんとも安心感の高いアイサイトX、運転支援システムとしては世界最高の味つけには大きなアドバンテージを感じるのです。

快適にドライ路面のドライブが続きます。あまりの気持ちよさで危うく最初の取材ポイント、那須高原にある空中浮遊キャンプが楽しめる「Dom'up camp village 那須高原」を通り過ぎるところでした。東北自動車道の那須ICで下ります。その際にも料金所ではちゃんと減速してくれるのですからアイサイト、なかなかのものです。ICから約10分で施設に到着です。最近流行のグランピングができるキャンプ場というイメージでしょうが、実はここ、ちょっと違います。

ベルギーでデザインされた「Dom'up(ドムアップ)」とは、6角形のデッキをもったドーム型テントのことです。開放的なそのデッキにはソファベッドなどが設置されていて、ゆっくり過ごせる室内空間があります。そのドムアップを可能な限り自然の木を傷めることなく利用して空中に吊り上げたのが「Skyタイプ」、地上に設置したのが「Fieldタイプ」といいます。

三座、茶臼岳、朝日岳、三本槍岳といった那須連山の麓からは、いよいよ雪道が始まります。とくに会津地方にこのまま一般道で抜けるとするとかなりの積雪も覚悟です。

那須のキャンプ場から一般道で国道289号線、そして会津下郷に抜け、そこからは国道121号線で会津若松までのワインディングです。途中には「塔のへつり」とか「大内宿」、そして「鶴ヶ城」といった名所旧跡がズラリと登場するルート。残念ながら楽しんでいる時間もなかった上に、途中の山道は雪があまりなく、なんとも快適なドライ路面走行。ただ路面は適度に荒れていてSTIスポーツの足の硬さのようなものを感じるかと、乗り心地を心配していました。ところが突き上げもなく、電子制御可変ダンパーと剛性の高いシャシがいい仕事をしてくれていました。途中で減衰力をコンフォート、ノーマル、スポーツなどとモードを変更してチェックすると、強弱の差は感じられても不快に感じるモードがなかったのです。つねにフラットな姿勢を維持したまま、こちらも快適な一般道走行です。

ただ、このドライブのスタート時からマスクをしていたのですが、時々ドライバーモニタリングシステムによって「居眠り警告」が点灯します。マスクをしていたことが原因なのか、私自身の表情の問題なのか分からないのですが……。新型コロナ禍という状況に応じて、マスク着用(黒以外)でも表情を読み取れるようにアップデイトが行われたと聞いていたのですが、マスクを外すと警告の頻度は減ったように感じます。

色々なことを試しながらフラットで快適な感触とともにドライブを続けてきました。少々のんびりし過ぎたのでしょうか会津若松に到着したのは、日がとっぷりと暮れてしまってから。すでに夕食の時間帯です。今回は気ままなドライブ旅なので予約に縛られる宿は確保せず、車中泊と決めていました。新潟に通じる国道49号線沿いにある「道の駅あいづ 湯川・会津坂下」に飛び込みました。寝袋に入って過ごせばアイドリングは不要です。

4:2:4の分割できるリアシートのシートバックを前方に倒して寝袋を広げます。この時、助かるのはレヴォーグの荷室の床がほぼフラットになることです。寝返りが自由に行えますから本当に快適に就寝できます。もちろん今回も爆睡です。

翌朝目覚めると周りは霧でほぼ真っ白。外気温はマイナス3度を示しています。周辺の果樹園の枝を霧氷が美しく飾っていました。ホワイトアウトとまでは乳白色の中にいるような状況でもACCはしっかりと追従や車線認識をこなしながら不安なく走り出しました。幹線道路以外には、まだ雪がけっこう残っていますが、北海道などの雪道とは違い、こちらは均一の路面状況は少なく、まだらな状態の凍結路面が連続します。

今日の最初の目的地は福島県喜多方市山都町にある「宮古そばの里」に向かう途中もまさにそんなコンディションでした。国道459号線の福島県と新潟県との県境近くにある宮古地区は標高500mほどのところにあり、古くからそば畑が広がっています。寒暖差や土壌のおかげで、上質なそばの栽培が可能だとのこと。

宮古地区の取材を終えて、雪道をたっぷり走ったのですが相変わらずスバルのAWD(4WD)の制御レベルの高さには感心します。左右の路面状況がネコの目のように変化するのですが、それでも直進安定性の高さを、そして大きく姿勢を崩すことのない制動性能は雪に強いスバルを改めて痛感します。

さらなる雪道性能を試すべく、磐越自動車道の西会津インターから新潟方面に突入です。前日まで寒波の襲来で、かなりの積雪があると聞きます。ここからは勝手知ったる地元。ところが最近の新潟の除雪態勢は凄いものがあり、周辺は2メートから3メートルを超える雪があっても幹線道路はもちろん、生活道路のほとんどがあっと言う間に除雪されるそうです(地元の友人談)。すでに午後という時間もあったのですが、ラッセルにも近いような路面状況はなかなか見当たりません。一方で消雪パイプのまき散らす水と半分溶けかけたシャーベット状の雪の路面がそこここにあります。

これが夕方になると凍結して、つるつるとグズグズと入り交じったような実に複雑な状況になるのです。ここではもちろん、AWDの制御の高さがキモとなります。轍に取られることは当然あるのですが、走行安定性に不安を感じるようなことはあまりありません。基本性能の高さに加えて、AWDとしての信頼性の高さがあるから、地元の友人達の多くはスバルユーザーが多いのだろうと思います。

磐越自動車道の安田インターで一般道におり、国道290号線をひたすら雪道を求めて山間部を入広瀬まで走ります。すでに暗くなりました。途中で何カ所かの雪道はありましたが、本当に快適な状態でドライブできました。せっかくのふるさとでしたが時期も時期なので実家にも友人宅にも寄らず、魚沼の「塩沢宿」に到着したときはすでに日が傾いていました。雪道と一言で言っても色々な表情をもっていて、クルマの適応能力の高さが問われることが、今回のルートでもよく分かります。そうした多くの場面で安定した走行を見せたことに、感心するばかりです。

そんな感想を抱いたところで夕食は新潟の「へぎそば」です。布海苔をつなぎに使った独特の喉ごしと適度なコシを楽しめる麺は、やはり地元で食べるに限ります。食事を終えたところで、そのまま関越で東京へ、といいたかったのですが、食事を済ませたところで、猛烈に温泉に入りたくなりました。しかし、ここでも、やはり我慢です。越後湯沢ICから関越道に入りました。10kmもの長さの関越トンネルの途中で、今度は「目を覚ましてください」の警報が鳴りました。トンネルを抜けた「谷川PA」でクルマを止め、一休みです。そこで仮眠で済ませれば良かったのですが、寝袋に入ってしまい、またしても爆睡です。

目覚めたのが翌朝4時。もうここまで来たらしっかりと寝ます。実はこの日、山梨県の山中湖で別件の仕事です。もはや東京に戻っている時間はありませんので関越から圏央道、そして中央道で山中湖と走ることに。富士山の麓、山中湖のロケ現場に到着したときはすでに1,166km走りきっていたのです。平均燃費は13.5km。これだけの高機能と、なんとも快適なグランドツーリング性能があって412万5,000円。その価格に納得しながら、さて山梨の「ほうとう」でも食べて帰りますか。

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