【解説】朝鮮の石油、肥料事情と安保理「史上最大制裁」の無力化

炭素1化学工業の建設現場を訪ねた金徳訓総理(2月13日)

 最近注意深く見るべき二つの統計資料が明らかになった。

 朝鮮の石油と肥料の輸入統計である。

 いずれも米日韓が朝鮮の経済窮状をプロパガンダする際に扱われるネタで、石油に関しては、年間50万バレルとその上限が制裁によって規制されている。2017年米国主導で、機械・金属・電気・電子・輸送機器製品の朝鮮への輸出を禁じたばかりか、石油製品の輸出上限を50万バレルに定めた安保理決議が採択されたが、その目的は朝鮮の核抑止力開発をストップさせ体制の弱体化させることあった。この制裁に中ロを巻き込んだことで、トランプ政権は「史上大の制裁」と豪語したことは周知の事実。

 ところが、驚くべきことは昨年朝鮮が輸入した石油は上限に大きく満たなかった。安保理の対「朝鮮制裁委員会」に報告された資料によれば、ロシアが同年1~9月までに輸出した清製油は10万7000バレル、中国は4万2000バレルに過ぎない。10~12月のロシアの輸出実績はゼロである。上限50万バレルの半分にも満たない輸入量だ。

 新型コロナウィルス流入を遮断するため国境を閉じているが、輸出入を止めたわけではなく、朝鮮が求めれば上限までの輸入は問題なかったはずだ。

 にもかかわらず朝鮮ではガソリンなどの燃油の高騰や混乱は一切見られず、困った様子もない。それ以上の量を輸入する必要がなかったようだ。

 このことから米国は、朝鮮が制裁上限の3倍以上の石油を「瀬どり」の方法で輸入したという偽情報を流している。しかし、その証拠は何もなく、昨年米国務省は「瀬どり」の証拠を通報すれば5億円の報奨金を出すと 発表した。前代未聞の珍事だが、「瀬どり」が実体のない荒唐無稽な濡れ衣であることを示している。ちなみにバイデン政権の国務省はトランプ政権の国務省が行ったこの恥ずべき発表を撤回した痕跡はない。

 朝鮮の正式発表によるものではないが、観測筋は朝鮮がすでに石炭のガス化と液化に成功して国内需要を満たしており、輸入の必要がないためで、制裁は完全に無力化していると伝えている。昨年の輸入量が上限の半分にも満たず、混乱の様子も見られないことは、この観測が的を得ていることを示している。

 肥料も同様で、朝鮮が中国から輸入した肥料は、2019年(上半期)の90,198トンから2020年(上半期)の11,400トンに激減した。中国の統計を引用報道した米国のマスコミは、輸入激減による肥料不足と農業不振を伝えたが、現実は全く異なる。

 朝鮮で石炭ガス化に成功して、興南と南興の化学企業でそれぞれ2009年と2010年から窒素肥料を大量に生産している。その生産量は年々増えており、肥料輸入の激減はこれに準じたものだ。

 最近韓国貿易協会が、南興青年化学連合企業で高圧バルブなどの部品が故障し、中国から輸入できず生産が止まっているとする荒唐無稽な資料を流布、日本経済新聞は何らの検証もなしに、嬉々としてこれを報じた。南興で能力増大にために圧縮機系統の設備改造を行っているとの報道が朝鮮でなされており、韓国貿易協会の資料はこれを逆手にとった謀略宣伝とみられる。おそらく国家情報院の指示によるものだろう。

 朝鮮の石油、肥料事情は、化学工業における自力更生はすでに確立されており、安保理の制裁が無力化していることを示している。

現在、朝鮮では大規模な炭素1化学工業基地建設が進んでおり、石油化学と別れを告げ石炭化学による化学工業の完全なチュチェ化が目の前にまで近づいている。(了)

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