いよいよ売却、所有物件を手放すときに実際に起きたこと

Bコミこと坂本慎太郎です。株式評論家としてラジオや証券会社の講演、個人投資家向けの教育コンテンツなどの活動をしています。前回は税金と業者からかかってくる電話の話をさせていただきました。今回は最終回で売却時に発生した問題、物件のリフォームについての話をしたいと思います。


売却前に一悶着

今年1月末の(売却の)決済予定だったのですが、決済直前に入居者が退去することになりました。入居者が出ていく前に売却できた喜びよりも後悔が少し大きかったです。

これは物件の家賃が市場価格より少し安かったために生まれた後悔です。購入した7年前はリーマンショックから立ち直っている途中だったので家賃の設定が若干弱気でした。7年間保有しているうちに家賃が周辺の上昇し、若干割安になっていました。投資用マンションの価格は家賃を元に決められるため、家賃を上昇させて入居者を決めてから売却すると売却価格が上昇します。

買い主はローンを組んで買う予定だろうと思っていたので、入居者が退去することでローンが出なくなって契約が白紙になるかもしれません。「契約が白紙になったら入居者募集して売却価格上がればいいな」と思っていたところ、契約書を見る限りローン条項が付いていないことを思い出してワクワクしてしまいました。

ローン条項とはローンが付かないとキャンセルできる条項で投資用不動産だけではなく、居住用の物件にも付いています。これが付いていないのでローンが付かないためキャンセルを行うと売却価格の20%を違約金として受け取ることができます。キャンセルされることを祈りながら契約日を待ちましたが、結局何ごともなく契約となりました。

もう一つ小さな問題が発生しました。契約書を見ると「引き渡し前の入居者退去時は原状復帰費用に関しては売主(私)持ち」と書いていたので少しの出費は覚悟しました。契約日前に原状回復費用の明細が送られてきたのですが、少しの塗装とエアコンの交換費用となっていました。塗装はお支払いするとしてエアコンは「完全に壊れていないが耐用年数を超過しているし調子が悪いので交換」ということでしたが、壊れてないのに交換は認められません。もし交換するのであればエアコンの償却期間を6年としてその1年分なら支払いますと伝えても納得してくれません。

売却しているのに1年以上(本来は1年でも月割り)の償却を取ることができないため費用計上できない点を丁寧に説明しました。完全に壊れているなら話は変わりましたが、壊れていないという正直さが話をこじらせました。

買い主は最低でも5万円の負担がほしかったようでどう折り合いをつけようか悩んでいたところ、壁紙の計上を忘れていたらしく、エアコンは買主が購入し、私は壁紙の費用で一件落着しました。

金額として5万円が気になるわけではありませんが、税務上の指摘は問題なので粘り強く交渉しました。

物件購入とリフォーム

昨年、北九州市の黒崎に300万円台で築30年のファミリータイプのマンションを購入しました。小さい頃、北九州の若松区に住んでいまして家族で黒崎のデパートに行っていたのを記憶の片隅に覚えています。近年、黒崎はデパートが閉店したり活気がないものの、商店街はまだ健在で小倉に次ぐ北九州市第二の街でしょう。

北九州の物件を選択したのは物件価格と家賃相場のバランスが取れているからです。北九州市の地形は洞海湾沿いに北九州工業地帯として一流企業の工場が立ち並び、裏側とモノレール沿いに平地、その奥が山になっていて居住できる土地は思いのほか少なくないです。安価に一戸建てが欲しい人は周辺の中間市などを選択しなければなりません。ファミリータイプの賃貸マンションは工場勤務の方にある程度の需要があるのではないかと思い購入することにしました。

金額も高くないのでまず1部屋と思い、1部屋買ったら同じフロアに売り物が出ていて「安くしてくれたら買う」と言ったら本当に指値が通ってしまい購入することになりました。今回はその指値が通った物件のリフォームの話をしようと思います。

物件が福岡県と遠方ですし、価格も安いのでノールックで購入していますが、実際に部屋を見てびっくりしました。売主は部屋の中を車いすで移動されていたようで部屋の中が車いす対応になっていました。段差が埋めてあったり、壁にコーティング(傷つかないのは良いのですが剥がすのが大変)していました。一番驚いたのは足が入るようにキッチン下の棚のドアを処分していたことで、キッチンの取り換えを覚悟しました。前に購入した別の部屋と差別化を図るため、将来の転売を考えてお金をかけてリフォームすることにしました。

中にあった窓なしのダイニングキッチンを窓がある隣の部屋とブチ抜き、和室を洋室に変えました。床やクローゼットなどの色は暗いウッド系から白系に変更、もちろんキッチンも新調しました。この部屋は数年賃貸で回して転売するつもりなのでリフォーム代金は200万円弱となりました。自宅のリフォームも大規模なものを複数回やったことがあるので住む人のニーズに合ったリフォームができたと思います。

不動産投資を始めるには?

何回か続けてきた連載も今回で最後となります。購入した物件の内容や他の物件のリフォーム奮闘記、コロナウイルス蔓延で逆境のなかで最近購入したオフィスビルの話、なぜ賃貸ワンルームマンションにローンが付くのかなど元債券のファンドマネージャーの経験を踏まえた裏話なども書きたかったのですがそれはまたの機会にしたいと思います。

将来の資産形成をしている方は長い運用になるわけですし、長い運用に一番適しているのは不動産だと思います。不動産投資のインカムはあなたの資産形成の強い味方になってくれるでしょう。また、唯一借り入れを行うことができる投資商品であることからポートフォリオを膨らませる効果もあります。これをうまく使うことでさらに効率的な運用ができます。

初めに不動産投資に取り組むのは現金で安い物件を買うか、ローンを組んでの都心5区の20平米以上のキャッシュフロー(家賃-ローン返済額)がプラスの中古ワンルームマンション投資だと思います。都心5区は高いですし、なかなかいい物件が見つからないと思いますが、中古であれば新築より安いですし、多少古くなっても駅が近ければ内装を変えると借り手はいます。賃料も安定していますし、粘り強く探してください。

不動産についてはラジオNIKKEIで毎週水曜日の17時20分から「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」という不動産中心のポートフォリオ番組をやっています。不動産について多方面から話していますので参考にして下さい。

長々と書いてきましたが皆さんの運用の一助になれば幸いです。

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