「今の野球は打たないと代えられる」根尾アピールの陰で…中日京田が迫られる決断

中日・京田陽太【写真:小西亮】

春季キャンプで立浪臨時コーチからマンツーマン指導の日々

自らに向かってくる若き才能は、連日バットで結果を残している。中日・京田陽太内野手はキャンプ中、報道陣からよく根尾昂内野手のことを聞かれた。「いい選手なのは間違いないですからね。別に聞かれるのは嫌じゃないですよ」。周囲から見れば対決の構図。ただ、京田は純粋に自らと向き合い、課題にもがき、悩んで答えを出そうとしている。【小西亮】

キャンプ地の球場と屋内練習場の200メートルほどの距離を、何度往復しただろうか。立浪和義・臨時打撃コーチと並び、ゆっくり自転車をこぐ。昼下がり、マンツーマンの個別練習でとにかくバットを振った。「いろんな引き出しを教えていただけました」。間近で感じる熱は、自らへの期待と受け取った。

もう周囲から「打てない」と言われるのは聞き慣れた。新人王を獲得した1年目の2017年は球団の新人記録を塗り替える149安打を放ち、打率.264をマーク。しかし2年目以降は2割5分すら超えられず、レギュラーとして5年目を迎えた。その反面、年々と自信を増す守備。「守れる“けど”……」という言葉を覆すには、バットで結果を出すほかない。

「立浪さんは、僕がプロに入って初めて自分と同じ『右投げ左打ち』のコーチなんですよね」

今季もチームの1軍打撃コーチ3人はともに「右投げ右打ち」。プロ入り後は2軍に小笠原道大監督や森野将彦打撃コーチはいたものの、深く指導を受ける機会は少なかった。ようやく巡り合えた指導者は、まさかの「ミスタードラゴンズ」。存在感に気圧されながらも、伝えてくれる技術や意識はあくまでシンプルだった。

試合に出続けるために…結果が出ない時に「やり続ける勇気が持てるか」

「俺も引退が近くなった時にいろんな打ち方したけど、結局無駄なものを削ぎ落としていった」

そう経験を伝えられ、手取り足取りされながらスイングを見つめ直した。トップを早く作る意識づけとともに、テークバック時に2段階でタイミングをとってしまう“2度引き”の悪癖を指摘された。「言っていただいたことは理解できているので、意識はしています」。ステップを踏みながらバットを振ったり、投手の距離が近いソフトボール選手の球を打ったり……。様々な角度からアプローチしていった。

「あとは根気強くやること」。立浪臨時コーチから繰り返された言葉を胸に刻む。今はただ、教えと向き合いながら、オープン戦へと向かっていく。その一方で、心の奥底でわずかな不安もくすぶる。偽らざる本音が、ふと言葉となる。

「もちろんやり続けることは大事ですし、根気強くやろうと思っています。でも、今の野球は打たないと代えられる。当然ですが、結果が出なかったら代えられる。僕の1番の目標である『試合に出続けること』を考えたら、どうしても目先の結果が欲しくなることもある。そんな時に、やり続ける勇気が持てるか。今の結果を求めていろいろやり方を変えてみるのか。迷う時はくるんだろうなと」

打撃は感覚。教えられた通りにやれば、必ず成功するわけでもない。いかに自らに合った知識や技術を吸収し、体現できるか。プロ4年間で痛いほど分かった。それでも、20日間の“立浪塾”が、大きな選択肢を与えてくれたのは事実。「迷って、考えながらバッティングして、すごく充実した時間でした」。すぐに答えは出なくても、その過程も糧になっていると信じて打席に立っていく。(小西亮 / Ryo Konishi)

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