鷹の密かな“アキレス腱” 栗原陵矢の捕手起用に込められた工藤監督の思惑とは?

ソフトバンク・栗原陵矢【写真:福谷佑介】

28日のオリックス戦で捕手として起用された栗原陵矢

ソフトバンクは2月28日、宮崎市のアイビースタジアムでオリックスと練習試合を行った。若手主体のメンバー構成で臨むと、打線が爆発して10-0で大勝。1か月に及んだ宮崎生活をいい形で締めくくった。

前日に続き、この日は主力メンバーは出場せずに若手中心のメンバーがスタメンに並んだ。その中で目を引いたのが5番に入った栗原陵矢捕手。昨年の日本シリーズMVPは、この日、対外試合で初めて捕手として出場し、マスクを被った。

岩嵜、嘉弥真、奥村らとコンビを組み、中盤まで無失点に抑えるリード。ここまで打撃の状態も上がってきていなかったが、この日は2安打を放ち、試合後は「いつもの倍疲れました。守れた方がいいと思いますし、試合に出るために自分の幅が増えていけばいいかなと思います」と笑顔で振り返った。

昨季は一塁手と外野手でレギュラーの座を掴んだ栗原。今年もここまでは一塁手と外野手での起用ばかりで、マスクは被ってこなかった。だが、キャンプ中はブルペンで投手の球を受けるなど、他のポジションの練習の合間を塗って捕手としての練習も行っていた。

果たして、栗原の捕手起用の可能性はどこまであるのか。試合後、工藤監督は「今日の姿を見ていると結構いけるかな、と。拓也のライバルになるかな…、というくらいに落ち着いてやっていました」と、この日の動きを評価した。

「甲斐くんにもし何かあった時に」実は課題の“2番手捕手”の存在

ソフトバンクの正捕手には甲斐拓也がいる。甲斐がレギュラーであることは工藤監督も認めている。チームにとって課題となるのは、その甲斐が怪我などで離脱した場合の対処策だ。

ベテランの高谷裕亮捕手がいるが、現在、右膝の手術からのリハビリ中だ。復帰を果たしても、仮に甲斐が長期離脱となった場合、この膝の状態からも高谷が毎試合マスクを被るのはほぼ不可能だ。となると、どうしても、高谷以外の“2番手捕手”が必要になる。

このキャンプでは谷川原健太捕手、海野隆司捕手もA組でプレーを続け、存在感も感じさせていた。ただ、海野は昨季の5試合だけ、谷川原は出場なしと、この2人に関しては1軍での経験が乏しい。海野や谷川原に託すか、それともこの2人よりも1軍経験のある栗原にするか。工藤監督ら首脳陣としても頭を悩ますポイントになる。

「甲斐くんにもし何かあった時に、怪我してほしくないけど、不慮の事故とかも起こりうる。高谷くんもリハビリにいるし、九鬼くんもまだ難しい。海野くんと谷川原くんもいるけど、経験は栗原くんの方が多い」と指揮官は言う。この“2番手捕手”を栗原が担えるかどうか、の試金石だった。

工藤監督は「去年の1軍のやってきたことが、キャッチャーになったとしても落ち着いて被れたんじゃないかな、と。非常によく見えました」とも語り、昨季1軍で野手として出場した経験が捕手としても相乗効果を生んでいるのでは、と分析。今後の捕手での起用に関しても「(可能性は)あります、あります」と匂わせていた。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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