『キンキーブーツ』劇場にいるかのような熱気に心ときめく

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 ニューヨーク・ブロードウェイの傑作舞台を映画館で上映する「松竹ブロードウェイシネマ」シリーズの本作。実話を元にした同名映画を、みずからもゲイであることを公表している名優でもあるハーベイ・ファイアスタインの脚本とシンディ・ローパーの作詞・作曲で新たに舞台化し、ブロードウェイで幕が開けて以来世界各国でロングラン上演されているトニー賞を受賞したミュージカルです。倒産寸前の靴工場を継いだ男性とドラァグクイーンのローラが工場再建に挑むなか、自分自身を受け入れ、ありのままに生きるという大切なことを教えてくれる素敵な作品です。

 映画が始まると、舞台が持つ魔法のように特別な空気が流れ出します。そして作品のアイコン的存在であるドラァグ・クイーンのローラが歌う有名なナンバー「ランド・オブ・ローラ」の歌唱シーンでは観客の「待ってました!」とばかりに拍手が鳴り響き、その瞬間、200年の歴史あるアデルフィシアターの客席にいるような不思議な感覚に包まれて胸がいっぱいになりました。もう1年以上コロナ禍でどこにも行けないけれど、映画館の爆音の中で観ると、まるで海外のクラシカルな劇場へと旅しているような気分を感じられるのではないでしょうか。

 ご存知の方もいらっしゃると思いますが、本作は日本でも上演され、亡くなった三浦春馬さんがローラを演じていました。ローラはさまざまな困難を乗り越えながらたくましく生きてきたタフなドラァグクイーン。三浦さんが演じるローラはそんなタフさに彼自身から滲み出る繊細さと優しい雰囲気をまとわせた特別な魅力に溢れてたことを思い出しました。本作を観た後は、Kinky Boots JapanがYouTubeで公開しているトリビュートを観てその完成度の高さを改めて多くの人に知ってもらいたいなって思います。★★★★★(森田真帆)

3月5日から全国公開

脚本:ハーベイ・ファイアスタイン

音楽・作詞:シンディ・ローパー

出演:マット・ヘンリー、キリアン・ドネリー

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