『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』ハリウッドの英雄たちがスクリーンに刻む若き兵士の死

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 ベトナム戦争でたった1人戦火に飛び込み、自分の命を投げ打って多くの兵士の命を救った実在の米空軍兵ウィリアム・H・ピッツェンバーガーと彼の名誉勲章授与が長く実現しなかった事実を描いた社会派ドラマ。ピッツェンバーガーの死から33年経った1999年アメリカで、30年以上ものあいだ名誉勲章授与を仲間たちから請願されてきた兵士について調査が開始され、ある事実が浮かび上がってきます。主人公のハフマンを演じるのは『キャプテン・アメリカ』シリーズのウィンター・ソルジャーや『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』の暴力亭主、テレビシリーズ「ポリティカル・アニマルズ」ではゲイで薬物中毒の息子役とさまざまな作品でカメレオンのような変化を見せているセバスチャン・スタン。

 ハフマンは敵に囲まれた戦火の中、命を救われた兵士たちを訪ねて当時の状況をききながら調査をしていくのですが、元兵士たちが語る証言から伝わる、悲惨な戦いと目の前で仲間を失った苦しみと30年以上向き合い続けてきた慟哭はリアルで、主人公のハフマン同様に心の奥底に伝わってきます。日本もアメリカも、どの国も戦争を経験した人たちは、本人はもちろんのこと家族も皆同じように苦しんでいて、悲しみを抱えていることを痛感しました。

 この映画、なにがすごすぎるって証言をする元兵士役で出てくるのが、まさにハリウッドの英雄たちってこと! 先日亡くなったクリストファー・プラマーとピーター・フォンダ、ウィリアム・ハート、エド・ハリス、サミュエル・L・ジャクソン、もうすごすぎ! ってつい興奮しちゃうほど。中学生の頃、夢中になって観ていた映画に出ていた俳優たちの、いくつになってもちっとも変わらない素敵な姿を見られただけでも本当にうれしくて。ぜひスクリーンで、名優たちの深みのある声、息遣い、視線で見せる感情の機微すべてを感じてもらいたいなって思います。★★★★★(森田真帆)

3月5日から全国公開

監督:トッド・ロビンソン

出演:セバスチャン・スタン、クリストファー・プラマー、ウィリアム・ハート、エド・ハリス、ピーター・フォンダ

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