緊急性ないコロナ119番しないで 川崎市が高齢者福祉施設に要請、市議「命の選別だ」と批判

川崎市が高齢者福祉施設管理者に出した文書

 新型コロナウイルスの感染拡大による県内の病床逼迫(ひっぱく)を巡り、川崎市が1月、市内の高齢者福祉施設に対し、入所者らの感染が判明しても緊急性がない場合は施設内で療養を継続するよう文書で要請していたことが2日、分かった。著しい呼吸悪化などがみられない場合は119番通報しないよう求める内容で、医師の有無にかかわらず事実上のトリアージを求めた形だ。

 協力要請は1月18日付。県内全体で病床に余力がないとした上で、▽呼吸の著しい悪化(酸素投与なしで血中酸素飽和度92%未満など)▽意識状態の著しい低下▽24時間以上、食事水分摂取が全く不可ーといった症状がない患者は、区役所に午前9時から午後5時までに入院調整を依頼すること、などと求めた。

 2日の市議会本会議の代表質問で、岩隈千尋氏(みらい)と宗田裕之氏(共産)は、施設側から困惑の声が上がったとした上で、「介護施設にトリアージを強いた」「命の選別だ」などと批判した。

 宮脇護健康福祉局長は「救える命を守る観点から、やむを得ない対応だった」と答弁。病床拡充や入院需要の減少を受け、2月12日に血中酸素飽和度95%を下回る患者の入院調整をする文書を出したと釈明した。

 県内の病床逼迫を巡っては、県が陽性患者が発生した病院は院内で治療を継続するよう要請していた。

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