【新型コロナ】回復者の血漿を投与する臨床研究開始 国立国際医療研究センター

 新型コロナに感染し、回復した人の血漿を他の患者に投与し治療効果が見込めるか検証する臨床試験が、国内で初めて始まった。2日、国立国際医療研究センターが発表した。

回復者の血漿に含まれる「中和抗体」を治療に応用

 新型コロナウイルス感染症に対する対策として、いまもっとも期待されているのが日本でも接種が始まったワクチン。しかしワクチンで100%発症を抑制できるわけではなく、当然ながら発症後の治療手段の確立も求められている。その有力な候補のひとつが、感染して回復した人の体内にできた、ウイルスを攻撃または無力化する力を持つ「中和抗体」の効力に期待し、その人の血漿を採取して他の患者に投与する「血漿療法」だ。この療法自体は、未知の感染症が流行した時ほぼ必ず試されてきたもので、その起源は北里柴三郎にまでさかのぼる。

 この血漿療法の可能性について、国立国際医療研究センターが昨年から回復した患者に対し血漿の提供を求めており、今年1月下旬より、臨床試験に入ったことが2日報告された。事前に実験で効果の高い中和抗体を含む血漿を選び出した上で患者100人に投与、投与しない100人との比較で効果検証を行う。もちろん現在標準とされる治療はどちらの群にも行い、倫理的問題が生じないよう配慮する。

 今回の臨床研究の主要メンバーの一人で、様々なメディアで新型コロナに関する情報発信を行なっている専門医のひとり、国立国際医療研究センター(国際感染症センター)の忽那賢志(くつな・さとし)医師は、「有効性が証明されれば、できる治療の重要な選択肢となりえる。全国で治療が行える体制も検討したい」と今後の展望も話している。

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