巨人ナインに「勝つ!」3連発 長嶋終身名誉監督が552日ぶりに東京ドームに出向いた背景

長嶋終身名誉監督(左)を出迎えた巨人・原監督(代表撮影)

いても立ってもいられなかったようだ。巨人の長嶋茂雄終身名誉監督(85)が、2日に東京ドームで行われた全体練習を電撃視察。同球場を訪れるのは522日ぶりのことでナインに「勝つ! 勝つ! 勝つ!」とゲキを飛ばした。新型コロナ禍をものともせず〝闘将モード〟と化し、自ら足を運ぶにいたった切なる思いとは――。

ミスターが東京ドームに帰ってきた。練習前には一塁ベンチ前で選手たちに「選手の皆さん、ご苦労さまです。今年はいいね」と語りかけ「勝つ! 勝つ! 勝つ!」と力強い言葉でハッパをかけた。

その後はブルペンでドラフト1位新人・平内龍太投手(22=亜大)の投球練習に目を光らせながら「ナイスボール!」と声をかけ、打撃ケージ裏では原辰徳監督(62)の隣で椅子に腰かけながら身長2メートルのドラフト5位ルーキー秋広優人内野手(18=二松学舎大付)をはじめ、岡本和らに助言も授けた。

長嶋氏が東京ドームを訪れたのは、2019年9月27日の阿部引退試合が最後。「ミスターは元気だ」との近況は伝えられながらも、新型コロナの感染拡大もあり、公の場からはすっかり遠ざかっていた。それでも新型コロナ禍が終息をみない中、このタイミングで〝沈黙〟を破った背景にはどんな思いがあったのか。

今回の来訪は球団側からの要請ではなく、長嶋氏本人からの申し出だった。春季キャンプ打ち上げ間際の2月27日に原監督のもとへ長嶋氏の「東京ドームに行っていいか?」との意向が伝えられ、指揮官は「ぜひお待ちしております」と二つ返事で了承したことで実現に至った。

新型コロナ禍という状況下だけに、球団首脳を通じてメッセージだけを伝えることもできたはず。それでも自らの目でチーム状態を確かめ、直接言葉をかけたのは「やはり2年連続で日本シリーズでソフトバンクに4連敗したことに忸怩(じくじ)たる思いがあったのではないか。なかなか球場に行くことはできなくても、闘志は全然衰えていない」と球団関係者は言う。

練習時の長嶋氏について、原監督は「昔とまったく変わらずですね。(選手に対して)いいものはいい、足りないものは足りないと。厳しい野球人としての目線で見られていました。しかも非常にお元気で、眼力も。昔を思い出させていただいて、私自身も背筋が伸びた」と話した。

緊急事態宣言下での来場こそが、9年ぶりの日本一奪回に向けたミスターからの最大のメッセージだったに違いない。

© 株式会社東京スポーツ新聞社