ゴーン逃亡“手助け男”はリアル「ランボー」だった! 米国で英雄扱い、頭脳はCIA級

逮捕されたマイケル・テイラー容疑者

会社法違反などの罪で起訴された日産自動車元会長カルロス・ゴーン被告(66)が保釈中にレバノンへ逃亡した事件で、東京地検特捜部が犯人隠避の疑いで2日に逮捕した米国籍の親子が拘束先の米国から移送され、東京拘置所に入った。映画さながらのゴーン逃亡劇にはいまだ謎が多い。逮捕を機に全容解明が期待されるが、その道は険しいようで――。

米陸軍特殊部隊グリーンベレーの元隊員マイケル・テイラー容疑者(60)と、その息子のピーター容疑者(28)を乗せた飛行機が、2日午後に成田空港に到着。東京・小菅にある東京拘置所に収容された。東京地検特捜部は昨年1月に犯人隠避と入管難民法違反ほう助の疑いで2人の逮捕状を取り、米当局が同5月に拘束。その後、2人は日本への身柄引き渡しに不服を申し立てたが棄却されていた。

かつてテイラー容疑者が所属したグリーンベレーと言えば、映画「ランボー」を思い浮かべる人がいるかもしれないが、テイラー容疑者の経歴はまさにランボーを地で行く人物だ。過去にはアフガニスタンで反政府組織タリバンに拘束された米紙記者の解放作戦や、レバノンで当時の史上最高額となる大量の大麻を押収した作戦など、数々の危険な作戦で手柄を立てている。

国際犯罪などに詳しい元刑事の北芝健氏は「グリーンベレーは、米軍に入り、実技試験を通過して部隊に入る。入隊後も市街地のような場所でストレスのかかる訓練をこなす。銃の使い方などの技術はトップレベルで、頭脳はCIAくらい」と指摘。

その上で、「マイケル・テイラーは、戦闘スキルの高さだけでなく諜報スキルにもたけた、この世界では知らない人がいない超有名人。請け負う仕事の報酬は大小あるが、大きいものでは億単位といわれる。米国では輝かしい実績から『英雄』とたたえ称される人物だ」と明かす。

一方で、過去には米国防総省との契約をめぐり、賄賂を渡したとして実刑判決を受けたこともある。当時についてテイラー容疑者は米誌に「やってもいない罪を認めるよう強要された。公正に扱われず、人生を壊された」と回顧。この時の経験がもとで、日本の検察から不当な扱いを受けたと主張するゴーン被告に共感し、逃亡の手助けをしたという。

2人の逮捕を糸口に“ゴーン逃亡事件”の真相を解明したいところだが、北芝氏は「今回の逮捕はゴーン被告逃亡で日本の捜査当局が世界中に赤っ恥をさらしたことに対する、最低限のメンツを守ったにすぎない」として、こう話す。

「どんなに尋問したところで、真相は出てこないでしょう。詳細を知るのは父親だが、元グリーンベレー。ランボーと同じで、ちょっとやそっとの拷問を受けても口を割らない教育を受けている。また、犯人隠避も入管難民法違反(不法在留など)も最高で懲役3年と、あまりにも量刑が軽すぎる。量刑と報酬を天秤にかければ、黙秘するのが得になる」

すでに2人はゴーン被告の逃亡の手助けで1億円近い報酬を受け取っているが、口を割らなければ報酬が上積みされる可能性もあるといい、真相解明は簡単ではなさそうだ。

さらに北芝氏は「残念だが、どうやったって事件の主役であるゴーン被告は帰ってこない。今回、逃亡を手助けした実動部隊を逮捕したことで最低限のメンツを守り、幕引きとなるのではないか」と厳しい見解を示した。

果たして東京地検特捜部は、厳しい見方をひっくり返す真相に迫ることができるか?

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