諫早の未来 市長選政策を読む<3> まちづくり 大久保氏「市長主導で解決策を」 山村氏「商売成り立つ場所に」 宮本氏「店舗誘致の協力継続」

栄町再開発、諫早駅周辺再開発

 真新しいビルの1階が空き店舗のまま、2回目の春を迎えようとしている。長崎県諫早市中心部の栄町アーケードに立つ10階建ての再開発ビル西棟(アエル・ウエスト)。3階以上のマンションは入居を終え、2階には民間保育所と市の子育て支援施設「すくすく広場」が入る。
 栄町東西街区第1種市街地再開発事業として、地元商店主らでつくる組合がビル2棟を整備。総事業費約68億6千万円のうち、国と県、市が2分の1の約34億4千万円を補助。残りはマンション事業者や民間保育所などへの保留床処分金を充てる計画だった。
 店舗と駐車場が入る東棟(アエル・イースト)は2019年10月に開業。西棟は20年4月に開業するはずだったが、入居予定だった店舗がキャンセル。当時の運営会社は資金繰りが悪化し、昨年3月に解散した。
 同事業は「第1種」という再開発の手法の一つで、保留床の処分まで責任を持つことを条件に、建築工事を請け負う特定業務代行方式を採用。運営会社の解散を受け、特定業務代行者の2社が、保留床取得と店舗誘致業務を引き継いだ。しかし、市を中心に行政が再開発を後押ししてきた背景があり、「行政の失敗のツケを民間に押しつけた」という批判の声が絶えない。
 昨年春からの新型コロナウイルス感染の影響を受け、店舗誘致の見通しは立たない。4期目を目指す現職の宮本明雄氏(72)は誘致活動への協力を継続する考えだが、「利便性を生かしたオフィス需要なども考えつつ、コロナ禍の先行きが見えないので厳しい」と苦しい胸の内を明かす。
 これに対し、新人で元国土交通省職員の山村健志(つよし)氏(47)は再開発ビルだけでなく、栄町など周辺商店街全体の課題ととらえる。「アーケードという屋根が付いたスペースを高齢者や障害のある人、幼い子どもを育てている家庭、外国人などのコミュニティーの場に生まれ変わらせれば、自然と人が集まりやすくなり、商売として成り立つエリアにできる」。ピンチをチャンスに変える狙いだ。
 新人で元県議の大久保潔重(ゆきしげ)氏(54)は、空き店舗が続く現状をこう指摘する。「中央地区の商店街活性化に向けて、この事業は目玉事業だった。もっと市が積極的に関与し、(市長が)トップセールスして、市民が求めるものを誘致する働き掛けが必要。商店主や経済団体などの声を聞いて進めていけばいい」。市長主導で解決策を提案する。
 諫早駅周辺再開発への考え方も分かれる。駐車場やアクセス道路の整備、民間開発の誘導などを掲げる宮本氏に対し、コロナ後の企業の地方分散や移住促進を目指し、駅周辺のオフィス街化を打ち出す山村氏。大久保氏も国や県の組織再編をにらみ、周辺住民らと一体的なまちづくりを検討する姿勢だ。


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