シリア:北東部の避難キャンプでスタッフ殺害——治安の長期的な解決策確立が急務

© 特定非営利活動法人国境なき医師団日本

シリア北東部ハサカ県のアルホール避難キャンプ=2020年9月3日撮影 © MSF

シリア北東部ハサカ県のアルホール避難キャンプ=2020年9月3日撮影 © MSF

シリア北東部アルホール避難キャンプで2月24日と27日に発生した事件と事故で、国境なき医師団(MSF)のスタッフ1名が殺害され、3名が負傷した。滞在者の3分の2を子どもが占める同キャンプの治安状況は著しく悪い状況が続いており、今年に入ってからも30人以上が殺害されている。「今世紀最悪の人道危機」と呼ばれるシリア紛争が10年目を迎える中、弱い立場に置かれた人びとは、依然として命を脅かす安全上のリスクと日々直面している。MSFはキャンプ滞在者の出身国と国際社会に、キャンプ内治安の長期的な解決策の早急な確立を求めている。

安全が守られないキャンプ

2月24日夜、非番のMSFスタッフ1名が、暮らしていたテント内で家族とともに殺害された。MSFは現在、殺害の状況や事態の把握を進めるとともに遺族のサポートを行っている。MSFのシリア担当緊急対応マネージャー、ウィル・ターナーは、「人が頻繁に殺害されています。入居するテントの中で殺されるということも少なくありません。遺された子どもたちを世話する人もいません。当局には、いつ何時も人びとに安全と安心を提供する責任があります」と訴える。

2月27日には、キャンプ内で行われた結婚式の火事でMSFスタッフの娘(4歳)が亡くなり、スタッフ3名が負傷した。子どもが誤って倒したストーブから出火し、隣接するテントが延焼。この火災で、MSFスタッフの娘を含む7人が死亡し、MSFスタッフ3人とその家族を含む約30人が負傷したとみられる。

多くが治療のため、ハサカ市内の病院に搬送されたものの、患者と搬送先病院の照合が錯綜しており、負傷者の総数ははっきりしていない。治療中のMSFスタッフの1人は、ともに負傷した家族の安否がわからず、「うちの子どもがどこにいるのか知りたい。家族のことで頭がいっぱいだ」と語っている。

アルホール避難キャンプの滞在者の3分の2は子どもだ=2020年9月3日撮影 © MSF

アルホール避難キャンプの滞在者の3分の2は子どもだ=2020年9月3日撮影 © MSF

制限を受けるキャンプ内の医療活動

過去2年のアルホール・キャンプの治安・安全は看過できない状況が続いてきたが、今年はさらに悪化し、これまでに30人以上が殺害されている。大半は銃で殺害され、その他に銃撃戦に巻き込まれた人、ナイフで襲われた人、避けられたはずの事故で亡くなった人もいる。

今年1月下旬には2件の銃撃事件が発生し、母子1組を含む被害者4人がキャンプ内のMSF小児栄養失調診療所で手当てを受けた。

治安状況が悪化していることから、MSFも、滞在者の入居先テントでの治療提供や一部の水・衛生活動など、キャンプ内での出張業務の一時中断を余儀なくされている。

安全策の確立が急務

直近の惨事は、暴力と危険な生活環境がもたらした人災だ。キャンプは地元当局と治安部隊の管理下にあり、滞在者の大半はキャンプ周辺を離れることは許されていない。

MSFは国際社会とキャンプに暮らす民間人の出身各国に対し、キャンプの安全について長期的な解決策立案の責任を負うよう求める。その解決策は、滞在者の安全に資するものであり、国際人道法や国際人権法といった国際法規に沿うものでなければならない。