【国際女性デー2021】「日本の性教育は一方通行」…話し合える実用型に 学生たちの提唱

避妊具の使い方について学ぶ「DAISY」のメンバー。画面を使って説明しているのが矢野真奈さん=2019年6月、矢野さん提供

 性暴力被害から身を守ったり、相手を傷つけたりしないために、正しい知識を身に付け、対処に役立てる性教育の在り方が問われている。性に関する悩みや疑問を同世代で率直に話し合える環境づくりに取り組む東洋大4年の矢野真奈さん(22)は「日本の性教育は教材の内容を先生がなぞって伝える一方通行型。子どもたちが性の問題に直面したときにどう対処したらいいかを判断する実用型になっていない」と問題提起する。

◆避妊の話、タブー扱い?
 矢野さん自身、交際相手との関係の中で避妊や性交への同意などについて思いを巡らせたとき、家族や友人に相談したり、アドバイスを求めたりすることをためらう現実があった。

 「性の問題は、人権や将来設計にかかわる大切なことなのに、タブー視されるのはなぜだろう」。思い当たったのが、学校での性教育の在り方だった。

 男女の体の違いや成熟の仕方、胎内で受精卵がどう成長するのかは教えられても、前提となる性交を正面から学んだ記憶はなかった。だから、避妊の仕方や避妊具の使い方についても言及されることはない。

 「避妊具の役割は性感染症防止の意味で語られ、性暴力などに起因する『望まない妊娠』へのアプローチはなかった。パートナー間で性交の意思を確認し合う大切さも学ばなかった」と矢野さん。性を真面目に楽しく話せる場づくりをコンセプトに活動する学生団体「DAISY」で意見交換した際もメンバーから「性交や避妊という肝心なことをぼやかす教育の在り方が、性について悩みを打ち明けたり、相談したりすることを妨げる要因になっているのではないか」との意見が出た。

◆誤った情報を無分別に
 教育が肝心なことに踏み込まない中で、矢野さんはインターネット上にあふれる性に関する誤った情報を若者が無分別に受け入れてしまうことを懸念する。会員制交流サイト(SNS)には、性を商品化する書き込みも後を絶たない。

 「避妊したはずなのに生理がこない」「パートナーと性行為に関し、認識のずれがある」-。DAISYには同世代のそんな悩みが寄せられる。

 矢野さんは言う。「学ぶ機会が限られている上、実用的な学びになっていないから、ネット上の誤った情報に頼らざるを得ない現実がある。性教育の在り方を見直すことが、性についてオープンに話し合える環境につながる。それが深刻な性暴力被害や望まない妊娠に主体的に対処し、相手のことを思いやって傷つけない第一歩になるのではないか」

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