【解説】米国の掌中で踊る事大主義政権の醜態

米国が与える「役割」?

 「バイデン大統領に対しては、北朝鮮の非核化を優先課題とし、その実現には韓国により広範な役割を認めることが必要だと呼び掛けたい」

 この奇妙な発言は、韓国の次期大統領候補の一人である李洛淵現与党代表が4日に行った「ブルームバーグ」とのインタビューで語った言葉だ。

 李洛淵代表の発言は文在寅政権の立場を反映したもので、この発言から確認できる事柄が二つある。

 一つは、韓国が「北朝鮮の非核化を優先課題」にしていることだ。朝鮮の一方的非核化は米国が追及している武装解除論だ。韓国が一貫して米国の対朝鮮敵対政策に追従してきたことはすでに広く知られていることではあるが、一見、北南対話に積極的にみえる文在寅政権が追及しているのは、実は、北南の和解、平和ではなく、朝鮮の武装解除であることを改めて確認させてくれる。

 二つ目は、韓国が米国に「より広範な役割」を認めてくれることを求めていることだ。

 なぜ、“独立国家”であるはずの韓国が米国に「役割」を与えてくれることを求めるのか?実に奇怪な発言と言わざるを得ない。自らが米国の属国で、米国の「承認」下で動く存在であることを、恥も外聞もなく内外にさらす醜態に他ならない。

 朝鮮半島問題の解決において、独自に、自主的に考え判断し動かないのであれば、その存在価値はない。朝鮮が米国の掌中で踊る文在寅政権を相手にする意味がない。決定権者である米国と談判すればいいだけの話だ。

 バイデン政権の発足とともに、文在寅政権は米国に早期の朝米交渉を求めるとともに朝鮮に対する、防疫協力など、朝鮮が非本質的問題と除けた提案をオウムのように繰り返し、米国に制裁の例外承認などを求めている。

 このような動きに対して米国はどうも歓迎していないようだ。朝鮮は「非核化の意志がある」との文大統領発言や、「制裁効果の見直し」などに言及する統一部長官の発言に不快感を示している。

焦燥感の表れ

 にもかかわらず、文在寅政権が執拗に韓国の「役割」を米国に哀願しているのは焦燥感の表れに見える。

 文在寅大統領自身が、「体制競争ですでに韓国が勝った」などと挑発的で敵対的な発言を繰り返しているが、朝鮮の「国家核戦力完成」を受けて朝鮮半島、東北アジア情勢における韓国の存在は大きく低下しほぼないに等しい。

 朝米首脳会談の実現はその結果いかんにかかわりなく、誰も戦略国家に浮上した朝鮮の意向を無視することができなくなったことを示している。

 2019年6月30日、板門店で金正恩委員長とトランプ大統領が対面し会談したのは周知の事実だ。この時、トランプ大統領は文在寅大統領が板門店に同行することも望まなかったことはマスコミにも報じられた。またトランプ大統領が韓国側施設から軍事境界線に向かう際、トランプ大統領が施設をでたとき、後ろにいた文在寅大統領の目の前で、米国側警護員が扉を閉じた場面は何回も映像で報じられた。

 朝鮮半島の地で行われた朝米首脳の面会と対話に、一方の当事者であるはずの韓国大統領は除外されたのである。

 大国に従属した小国は、常に大国の意向に振り回され、翻弄され、ついには国権まで失いかねないというのが歴史の教訓だ。

 分裂しているとはいえ、民族問題の一方の当時者として外征依存を振り払い独自の判断で自主的に問題解決に臨まなければ何も解決できない。

 米国の手のひらから飛び降りようとはせず、手のひらの上で「役割」を哀願したからと言って、誰も真にその存在に敬意を示すことはない。

 国家の体裁をとっているだけの事大主義政権に何かを期待するのは愚か極まりない。(了)

© KOYU BUN