【昭和~平成 スター列伝】スーパースター・ビリー・グラハムが初来日 マッチョ系レスラー憧れの存在

【写真左】控室でポージング。すさまじい筋肉だ【写真左】アニマル浜口を太い腕でグイグイ絞め上げる

【昭和~平成 スター列伝】今では当たり前となったプロレスラーの入場テーマ曲。そのパイオニアとなった団体とレスラーをご存じだろうか?

1974年9月、スーパースター・ビリー・グラハムが初来日を果たした。「スーパースター」はニックネームというより、れっきとしたリングネームの一部で、ロックミュージカル「ジーザス・クライスト・スーパースター」にちなんだもの。「ビリー・グラハム」は有名なキリスト教伝道師の名前をそのままいただいた。身長193センチ、体重125キロ、ボディービルで鍛えた見事な肉体が売りだ。

1か月前に“人間風車”ビル・ロビンソンからIWA世界ヘビー級王座を奪取したばかり。そんな米マットの新しいスターが、“ナチの妖獣”バロン・フォン・ラシクとの二枚看板で国際プロレス「スーパー・ワイド・シリーズ」に参戦した。

9月15日、東京・後楽園ホールで行われた記念すべき日本デビュー戦の対戦相手は、若手のアニマル浜口だ。このシリーズから東京12チャンネル(現テレビ東京)による放送が始まり、派手な演出をということでグラハムは「ジーザス・クライスト・スーパースター」のテーマ曲に乗って登場。日本では、これがテーマ曲を使った入場の草分けで、まさに記念すべき瞬間だった。

互いにボディービル出身ということで、試合前にはリング上でベンチプレス対決が行われた。結果は220キロを挙げたグラハムの勝利。試合も太い腕を利したスリーパーホールドで半失神状態に追い込むなど、常にパワー全開。最後は浜口を軽々と持ち上げてノドをトップロープに打ちつけると、強烈なエルボードロップでとどめを刺した。

「とにかくすごいやつだ。自分もベンチプレスなら絶対に負けない自信があったが、あんな馬力の持ち主とは…」とうなだれた浜口に対し、グラハムは「浜口なんて若造は、口ほどでもないやつだ。8分で料理したがふつうなら5分でカタがついていたはずだ。まあ、日本で俺に勝てるやつはいないだろう」と豪語した。実際には10月7日、越谷市体育館でマイティ井上にIWA王座を奪われてしまったが…。

ハルク・ホーガンやランディ・サベージら多くのマッチョ系レスラーにとっては憧れの存在。実はマイクパフォーマンスにも優れ、新しいタイプのヒールとしてリック・フレアーが大いに参考にしたともいわれる。昨今のWWEマットを見れば、グラハムの影響がどれだけ大きいか分かるだろう。(敬称略)

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