MotoGPカタール公式テスト1日目:アプリリアのA.エスパルガロがトップタイム。王者ミルは3番手

 2021年シーズンMotoGPの公式テストがカタールのロサイル・インターナショナル・サーキットで始まった。3月5日のシェイクダウンテストを終え、6日から7日、そして10日から12日にかけて公式テストが実施される。3月6日に行われた1日目のテストについて、テスト後のオンライン取材でのライダーのコメントを交えて振り返っていこう。

 2021年シーズン開幕前の公式テストは、ここ数年そうであったように、2月にマレーシアのセパン・インターナショナル・サーキット、その後3月にカタールで実施される予定だった。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、セパンでの公式テストは中止。このため、カタールでのテスト日程が拡大された形で行われている。

 テストがカタールという唯一のサーキットで行われることは、これまでとは違った難しさを生むようだ。ライダーのコメントを引用してみよう。

 ジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)はオフシーズン中に行ったインタビューの中で「セパンはテストにとてもいいサーキットなのだけど、カタールはハードブレーキングなコース。おそらく、テストに最適というわけじゃないと思う。だから、全メーカー、全ライダーにとって、カタールで誤った選択をしないように注意しないといけないね」と語っていた。

2021年MotoGP公式テスト1日目 ジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)

 また、中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は2月中旬のチームローンチ後の取材の中で「カタールはレイアウト的にはいいのだけど、砂漠の中のサーキットなので、砂が多く滑りやすいですし、夜間での走行になります。コンディションとしては少しトリッキーなので、バイクを仕上げるのに向いているのか、というと、少し不安を感じる部分はあります」と述べている。

 もちろんすべてのチーム、ライダーが同じ状況ではあるが、カタールでのテスト5日間だけでシーズン全体を戦うバイクを仕上げる、そうした厳しさが今季のテストには付されることになるというわけだ。

 また、今季は新型コロナウイルス感染症による状況を鑑み、コンセッション(優遇措置)を受けないメーカーについてはエンジンのアップデートは許可されていない。ただし、2020年にコンセッション適用外となったKTMは、開幕までに新しいエンジンを投入できることになっている。アプリリアとKTMを除く4メーカーは、2020年と同じエンジンで2021年シーズンを戦わなければならない。

 3月6日から始まったカタールでの公式テスト1日目は、レギュラーライダーの21名にテストライダーの8名を加えた29名で行われた。なお、レギュラーライダーのうち、右上腕骨の回復に努めるマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)は、このカタールテストには参加しないことが公表されている。

 こうしたなかで1日目のトップを飾ったのは、アプリリア・レーシング・チーム・グレシーニのアレイシ・エスパルガロ。アプリリアは今季、唯一コンセッション(優遇措置)を適用されるメーカーで、エンジンのアップデートが許されている。テストではエンジンはもちろんのこと、新しいシャシー、エキゾーストなどが投入された。空力デバイスについては2種類をテストしているということだ。

 アレイシ・エスパルガロに続く2番手にはホンダテストライダーのステファン・ブラドルがつけた。ブラドルは3つのシャシーをテストしているとのこと。一方、マルク・マルケスを欠くホンダのレギュラーライダーの中で最もホンダ歴が長い中上は、2019年型から2021年型への乗り換えに集中した。2020年型から2021年型ではエンジンのアップデートはないが、中上が昨年まで駆っていたマシンは2019年型のため、これまでとは違うエンジンを搭載したホンダRC213Vを走らせた。

 その第一印象について中上は「2019年型と最新型はかなり違っていました。第一印象はよかったです。一方、エンジンのキャラクターがまったく違うので、どう改善できるのか、理解する必要がありますね。コーナー立ち上がりの部分はもっと改善が必要だと思います」と語っている。

 また、レッドブル・KTM・ファクトリーレーシングからレプソル・ホンダ・チームに移籍したポル・エスパルガロはKTMのRC16とホンダのRC213Vマシンの違いについて「ホンダは結果のために、少しがんばらないといけないバイクだね。それはそうとしても、とにかくまったく違う。僕としてはいい印象を抱いたよ」というファーストインプレッションだった。

2021年MotoGP公式テスト1日目 ポル・エスパルガロ(レプソル・ホンダ・チーム)

 3番手には2020年チャンピオンであるジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)が続いた。1日目はMotoGPマシンでのペースを取り戻す日になったそうだが、うまく進んでいることはタイムが表している。

 一方、テストライダーのシルバン・ギュントーリは、新しいシャシーやサスペンションなどをテスト。ギュントーリによれば、スズキのGSX-RRはすでに持っているポテンシャルを底上げする形で進化しようとしているという。チャンピオンマシンであるGSX-RRは、全体的なバランスのよいマシンだと言われている。また、ギュントーリはこの日、すでに2022年に向けた新しいエンジンのテストにも着手した。

 ドゥカティのファクトリーチームに加入したジャック・ミラー(ドゥカティ・レノボ・チーム)は4番手。新しい空力デバイスをテストしている。同じく今季からファクトリーライダーとなったフランセスコ・バニャイアは2コーナーでクラッシュし、13番手だった。また、テストライダーのミケーレ・ピロはフロント部分に追加されたウイングレットをテストしていたと見られる。

2021年MotoGP公式テスト1日目 ジャック・ミラー(ドゥカティ・レノボ・チーム)

 5番手にはKTMのファクトリーチームライダーとなったミゲール・オリベイラ(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)。前述のようにKTMは開幕戦までにエンジンのアップデートが可能なのだが、オリベイラのマシンはこの日、特筆すべき新しいパーツやエンジンはなかったようだ。

 そして、トップ5内に食い込まなかったヤマハ勢のトップはフランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)で、7番手。モルビデリはヤマハ勢のなかで、唯一最新型ではなく“Aスペック”と呼ばれるマシンを駆っている。

 昨年までモルビデリのチームメイトで、今季からヤマハのファクトリーライダーとなったファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)は15番手。1日目のテストを終えてクアルタラロは「新しいシャシーをテストしたのだけど、バイクに乗る感覚を取り戻すのに半日かかったから、いいか悪いかはまだ言えないんだ」と語っていた。MotoGPマシンを走らせる感覚を取り戻すのに苦労していたとも聞こえる。2020年開幕戦から2連勝したものの、シーズン後半に失速した流れを断ち切れていない状況に見えなくもないのだが……。残り4日間のテストはクアルタラロにとって、かなりのキーポイントになりそうだ。

2021年MotoGP公式テスト1日目 ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)

 ヤマハと言えば触れておきたいのが、サテライトチームであるペトロナス・ヤマハSRTに移籍したバレンティーノ・ロッシである。14番手ではあったが、「結果はよくないけれど最初の感触はよかったよ」と前向きなコメントを残した。

 カタールでのMotoGP公式テスト2日目は、3月7日、日本時間20時から翌3時にかけて行われる。

2021年MotoGP公式テスト1日目 フランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)
2021年MotoGP公式テスト1日目 バレンティーノ・ロッシ(ペトロナス・ヤマハSRT)
2021年MotoGP公式テスト1日目 フランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)
2021年MotoGP公式テスト1日目 アレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)
2021年MotoGP公式テスト1日目 ミゲール・オリベイラ(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)

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