東日本大震災から10年、改めて確認したい日本の防災・減災政策と注目企業

国土強靭化という言葉を知っていますか?国土強靭化とは、大雨や津波、地震、火山噴火、異常気象等の自然災害に対して、防災や減災を図ろうとする政策のことです。

国土強靭化は東日本大震災以降、株式市場で注目されてきた投資テーマの1つですが、今年2月に福島県沖で最大震度6強となる強い地震が発生したことや、今年は東日本大震災から10年を迎えることなどから、改めて注目が集まる可能性があります。

そこで今回は、国土強靭化に関する政策の内容や、恩恵を受けそうな関連銘柄を紹介したいと思います。


国土強靭化に関わる公共事業費は増加傾向

国土強靭化に関わる政府全体の公共事業費はここ数年、増加傾向にあります。その理由は、最近は毎年のように台風や大雨による風水害や、土砂災害、地震などの自然災害による被害が発生しているためです。

安倍前政権が打ち出した国土強靭化構想も進められており、2020年度(令和2年度)の政府全体の公共事業費は9兆3千億円と3年連続で増加する見通しです。また、菅政権も国土強靭化を主要な政策に位置付けています。

菅首相は首相に就任して間もない昨年12月に「防災・減災、国土強靭化のための5ヵ年加速化対策」として、2021年度(令和3年度)から2025年度(令和5年度)の5年間で約15兆円の事業規模となる国土強靭化対策を決めました。その内容は、以下の3つを柱としています。

(1)激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策(台風や大雨、南海トラフ地震などへの対策)
(2)予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策の加速(高度経済成長期以降に集中的に整備された道路、橋、トンネル、河川、下水道、港湾等のインフラの老朽化によって発生する負担の増大や社会経済システムの機能不全を防ぐ対策)
(3)国土強靭化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進(国土強靭化事業を円滑化するICTの活用、観測体制強化、スーパーコンピューターの活用による気象予測の高度化などの対策)

新年度になるこの4月から菅政権による国土強靭化政策が始まる見通しです。

中期的にも取り組まれる国土強靭化政策

日本は、その地理的、地質的特性から、度重なる大規模自然災害によって様々な被害がもたらされてきました。将来的には南海トラフ地震、首都直下地震等が発生する可能性が指摘されています。

さらに今後は、高度経済成長期以降に整備された国内のインフラ施設が建設後50年以上となる割合が加速度的に高まり、老朽化が進む見通しもあります。

このような環境においては、ひとたび大規模な自然災害が発生すれば、国土の広範囲に甚大な被害をもたらすことになります。自然災害やインフラの老朽化による被害を最小限に抑え、安心・安全な国づくりを行うためにも、中期的に取り組まれる国土強靭化と関連する企業に注目してみてはいかがでしょうか。

様々な防災関連企業に追い風

国家強靭化政策の推進は、様々な防災関連企業にとって追い風になりそうです。個別銘柄では、大成建設(1801・東証1部)や大林組(1802・東証1部)などの大手ゼネコンのほか、セメントの太平洋セメント(5233・東証1部)、道路舗装のNIPPO(1881・東証1部)、橋梁やトンネルなどの補修工事を行うショーボンドホールディングス(1414・東証1部)、河川・道路補強を行う前田工繊(7821・東証1部)、土砂崩れを防ぐ製品を扱う岡部(5959・東証1部)、道路・ダム・港湾などの土木工事を手掛ける日本国土開発(1887・東証1部)等に注目しています。

無電柱化工事で実績を持つ協和エクシオ(1951・東証1部)、上下水道コンサルタントのNJS(2325・東証1部)、地質調査を行う応用地質(9755・東証1部)、ドローンを開発する自律制御システム研究所(7856・東証マザーズ)、スーパーコンピューターに強みをもつ富士通(6702・東証1部)等も注目企業と言えるでしょう。

<文:投資調査部 川崎朝映>

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