ロッテ投手陣は「かなりの出来」 井口監督が期待、ドラ4河村は“パ・リーグ向き”

ロッテ・井口資仁監督【写真:荒川祐史】

ロッテ井口監督が語るリアルな想いを届ける月連載・第2回

プロ野球はいよいよオープン戦がスタート。3月26日の開幕に向け、順調にキャンプを打ち上げた12球団は、オープン戦を経ながら今季戦力の見極めを行っている。選手にとっては、開幕1軍入りへアピールできる最後の場。ギアを1段階上げた最終調整に取り組んでいる。

就任4年目の井口監督率いるロッテも、本拠地ZOZOマリンスタジアムに戻り、オープン戦をスタートさせた。監督就任以来、育成システムを見直し、チームの土台作りに励んできた指揮官の下、チームは徐々に順位を上げて、3シーズンで最下位からリーグ2位まで浮上した。

今季目指すは、もちろんリーグ優勝&日本一。チームスローガンに「この1点を、つかみ取る」を掲げ、森脇浩司1軍野手総合兼内野守備コーチ、松中信彦臨時打撃コーチら新たな声を取り入れて、キャンプでは泥臭く1点にこだわる意識をチームに植え付けた。

井口監督のリアルな想いを毎月お届けする連載シリーズ第2回は、キャンプで得た手応え、そして指揮官が考える佐々木朗希の強み、について語る。【取材・構成 / 佐藤直子】

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沖縄・石垣島でのキャンプを終え、沖縄から北上しながら練習試合を戦い、ようやくZOZOマリンスタジアムに戻ってきました。今年は新型コロナウイルスの感染対策のため、ファンの皆さんに直接キャンプの様子をご覧いただけなかった。練習試合でも、2月末に高知で行われた西武戦からようやくお客さんの前でプレーできたわけですが、やっぱりお客さんの拍手は選手の力になります。ましてや本拠地に戻って地元ファンの前でのオープン戦となれば、選手の表情にも一段とやる気が満ちていました。

この4年やってきた中でも、今年は一番いいキャンプが送れたんじゃないかと思います。

まず、投手陣は練習試合、オープン戦を見ていただいても、かなりの出来になっています。特に、若い選手がいい形で出てきました。ルーキーの鈴木昭汰、河村説人がしっかり放って、オープン戦が始まった段階でもローテーションと中継ぎに食い込めそうな位置にいる。昨季良かったのは、7回以降を投げる投手が安定していたから。澤村(拓一)が抜けた中で、小野(郁)や河村が頑張って厚みが増せば、先発から繋ぐ、いい流れができると思います。

河村はブルペンでの投球を見ると、そこまで迫力は感じない。でも、マウンドに立つと高身長(192センチ)もあって、上から投げ下ろすスタイルで非常に圧があると感じます。スピードガンでは時速140時キロ台半ばくらいですが、かなり打者も差し込まれている。縦の変化球を持つ投手なので、1年後にはどこまで成長するか楽しみですね。

パ・リーグは強打者が多く、逆方向に打てるホームラン打者も多いので、スライダーのように横に動く変化球よりもフォークやチェンジアップのように縦に動く変化球で空振りを取れる投球の方が通用します。ドラフトでも横変化よりも縦変化を意識した人選をしました。河村は我々が思っていた通りのピッチングをしてくれていますし、もっと真っ直ぐのスピードも出てくるでしょう。開幕1軍に向けて、残りの日々でさらにアピールしてくれたら、と思います。

ロッテ・小川龍成【写真:荒川祐史】

実感する投打ともに厚みを増した選手層「1軍登録枠を考えた時…」

期待しているのは、ドラフト1位の鈴木。去年は左腕の小島(和哉)、中村(稔弥)がローテーションに入り、もう1人左が欲しいところでの鈴木。右打者のインコースもどんどんツーシームで攻められるし、精度もかなり良く、投げっぷりもいい。左であれだけ攻めたピッチングができる投手はなかなかいないので、ローテーションに入れるように最後までアピールしてほしいですね。

毎年、投手陣の層が少しずつ厚くなっているのは嬉しいこと。結果的に、投手陣がいいとチームの順位が上がることは間違いない。ここまで補強・育成がしっかりできているのかなと思います。去年も岩下(大輝)、小島、中村と若手3投手がローテーションに入ってくれたので、今年は彼らがさらに勝ちと負けの差をどんどん広げてくれればいいなと思います。

野手陣はかなり練習量が増えたキャンプだったと思います。松中臨時コーチに下半身の使い方を教えてもらって、数もかなり振り込みました。守備でも森脇コーチがノックの量を増やして、内野の守備範囲を広げる練習をしてくれたので、いい時間を過ごせました。

松中臨時コーチには、マリンに戻ってからも見ていただいています。練習に取り組む姿勢や打者としての引き出しを与えてくれている。キツい練習も場を盛り上げながら乗り越えさせてくれている。今までのロッテにはないタイプのコーチかもしれません。

藤原(恭大)、山口(航輝)は元々、打撃のいい選手ですが、その中で教えていただいたタイミングの取り方など、いい形で参考にしながら実戦にも臨めています。安田(尚憲)は今、タイミングの取り方で悩んでいますが、開幕までまだ時間はある。自分が持つ感覚と練習してきた感覚を、実戦の中でマッチさせるのは難しい。でも、レアードもいますし、決してポジションは保障されていないので、気合をいれないと。

3月1週を終えた時点で、内野に関して構想はまだまだ固まっていません。山口が一塁を頑張っているし、二塁も中村奨吾が形としてできてきている。ただ、合流したレアードが三塁になるのか、一塁になるのか。遊撃、三塁も、ルーキーの小川龍成がかなりアピールをしているので、いろいろな形が見えている。そういう意味では、本当にざっくり1軍登録枠を考えた時、かなり選手があふれているので、層が厚くなってきたと実感しています。

控えの選手に関しても、平均的な選手ではなく、足のスペシャリストを置こうとか、打撃に特化した選手を置こうとか、考える余裕が多少出てきました。中でも、小川の存在はいろいろな意味でオプションを増やしてくれています。予想以上にゲーム感がいい選手で、試合になるとボールをしっかり上から叩けたり、走塁の1歩目のスタート、守備位置も含めて、かなりポテンシャルを持っている。小技も効きますし、盗塁にも積極的に挑戦してくれているので、使うほどにいろいろな味を出してくれる。アジャストが早い選手です。

ロッテ・佐々木朗希【写真:荒川祐史】

順調に階段を上る佐々木朗希「投手に必要なセンスは全て持っている」

キャンプで一番アピールしたのは、山口でしょう。昨秋のフェニックス・リーグから一塁守備に取り組んで、キャンプでは森脇コーチのノックを受けた。一塁でも非常に安定感がありますし、高校時代は投手だったと思えないくらい、いろいろなものを持っていると思います。藤原と一緒で、4番を打てて楽しいと思える選手。そういう選手は非常に伸びしろがあるし、メンタル的にも強いと感じています。

皆さんが気になっている佐々木朗希は、しっかり順調にステップを踏めていると思います。去年は体作りに重点を置いて試合で投げていないので、マリンでのオープン戦で登板予定ですが、我々が楽しみにしている以上に、彼自身の投げたい気持ちが強いでしょう。試合に投げられず焦る気持ちもありながら、自分で押さえながらここまで来ていますから。

朗希といえば、速球が注目されがちですが、僕は変化球の方が魅力だと思います。スライダー、フォークは本当に精度がいい。彼も球速はそこまで求めるところではないのかなと思います。時速170キロの声もありますが、僕は必要ないと思っています。真っ直ぐが速いだけでは打者は抑えられない。そこに対して変化球を非常に器用に操るので、制球で苦しむタイプではありません。

投げるだけではなく、その後のフィールディングだったり、走者を置いてからのクイックだったり、投手に必要なセンスは全て持っている。ローテーションに入る日が本当に楽しみです。

チームとしては優勝を目指す中で、開幕までのオープン戦は1点を取り切って、守り切る野球をしていかないといけない。パ・リーグはどのチームも投手がいいので、なかなか1点が取れない。そこで泥臭く1点を取る野球に、しっかりアプローチしていきたいと思います。

1点に対する意識は、選手の間でかなり高まってきたと思います。自分が犠牲になって走者を進めた時には、ベンチも非常に盛り上げる。ただ、まだまだ点を取れるところで取り切れていないのが現状。打者がどうアプローチしていくか。これから投手がどんどん調子を上げるなか、打者も磨いていかないといけないですよね。

去年はコロナで開幕がずれ込みましたが、今年はお客さんを迎えて予定通り開幕を迎えられそうです。もちろん我々も嬉しいし、ファンも待ち望んでくれていると思います。開幕ダッシュができるように、残り3週間でいい準備をしていきますので、楽しみにしていて下さい。

【動画】井口監督も期待、ドラ4河村が192センチから投げ下ろす実戦映像

【動画】井口監督も期待、ドラ4河村が192センチから投げ下ろす実戦映像 signature

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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