【2021年F1新車技術解説】レッドブルRB16B:不安定さの一因、ノーズ下のケープを修正

 2021年F1プレシーズンテストが近づくなか、各チームのニューマシンが次々に発表され、シェイクダウンが行われている。F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが、レッドブル・レーシングの2021年型マシン『RB16B』の分析を行った(全2回)。

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 真理は、細部に宿る。それは何も、F1に限ったことではない。とはいえ最新鋭のF1マシンにおいては、ごくわずかに見える変更が重大な結果を生み出すものだ。

 レッドブルのRB16Bはその名の示すように、2020年型RB16の発展型である。マシン前部を見ると、特徴だった細く絞られたノーズはRB16Bにも引き継がれている。しかし細かな部分には、違いが見て取れる(下の写真2段目:緑と赤矢印参照)。一方で、オーストリアで試され、最終戦アブダビではマックス・フェルスタッペン車だけに搭載された丸みを帯びた仕様は、発表写真を見る限り採用されていない。

レッドブル・レーシングF1の2021年型『RB16B』と2020年型『RB16』の比較(ノーズ)

 昨年型RB16のもう一つの特徴は、ノーズ下のケープだった。マシン下部の整流効果を狙ったものだったが、特に低速コーナーではこのケープの起こす渦流とフロントウイングによる渦流Y250が干渉し合う現象に悩まされた。その結果フロア下の空気の流れが乱れ、突然のスピンを引き起こしたのだった。

 その原因については、風洞実験で得たデータが実走コンディションにそぐわなかったことが明らかになっている。

「去年はその問題でかなり手こずらされたが、そこから多くの教訓を得た。風洞テストは必ずしも万能ではないことも、よくわかった」と、クリスチャン・ホーナー代表は言う。

 その結果RB16Bでは、ケープは後退し、より短いものになっている(下の写真:青矢印参照)。これによってフロントウイングによる渦流Y250との干渉をできるだけ防ぎ、フロア中央から下部へとよりスムーズに空気が流れるはずとのことだ。さらにケープ後部には、小さな切り欠きも加えられている(赤矢印参照)。

レッドブル・レーシングF1の2021年型『RB16B』と2020年型『RB16』の比較(ノーズ下のケープ)

 現在のF1でフロントのブレーキダクトは、空力的に大きな意味を持つ。レッドブルのそれはこれまでかなり大きかったが、RB16Bでは小型化されている(上の写真2段目:紫矢印参照)。それでもライバルたちに比べれば、まだけっこうな大きさではある。
(第2回に続く)

レッドブル・レーシングの2021年型マシン『RB16B』
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