3.11が変えた宮崎 命守る意識、日常から

地震による津波の発生を想定し、命を守る行動について意見を交わす児童ら=2月26日午後、宮崎市・宮崎港小

 「あなたは学校に、妹は家にいます。助けに戻りますか」。先月26日、宮崎市の宮崎港小6年の家庭科の授業で担任が問い掛けた。「地域の人との関わり」を考える学習の最後のテーマに選んだのが「防災」。地震が起き、津波が来るかもしれない-。「妹1人じゃ避難できないから助ける」「2人とも犠牲になるかも」。突然の災害に、自分や大切な人の命を守るため、どう動くか。児童らは真剣に議論を交わした。
 東日本大震災後の2012年、同校が県の防災教育推進校に指定されたのを機に取り入れたのが、「日常的な学び」だ。社会科の情報化社会の単元ではインターネット上の災害伝言板を教材として活用。算数は津波の到達時間や避難所までの所要時間を求める計算問題を盛り込み、国語でグラフや表を読み解き考えをまとめる際には、あえて地震や津波の統計資料を使う。
 冨永香教諭は「避難訓練に加え、日頃から防災を意識させることが、災害時に自分で判断できる力につながる」と強調する。
 宮城県石巻市の大川小の児童ら84人が津波にのまれ犠牲となった事例は、学校現場での防災の重要性を改めて突き付けた。
 宮崎市・青島小の防災主任を務める沖圭子教諭も「震災後、教育現場の防災への意識が変わった」と語る。
 同校では3年前から月1回、朝の会を利用して地震や津波などへの対応方法などについて学ぶ「防災の時間」を設けた。本年度から防災士の資格を持つ原口理香校長を講師に職員向けの防災研修もスタートさせ、抜き打ちの避難訓練も導入した。沖教諭は「抜き打ちの避難訓練で適切に動けなかった児童もいた。訓練や防災教育を繰り返す必要性を痛感した」。
 震災を受け、県教委も学校の防災力を高める取り組みに力を注ぐ。12年度以降、県立学校の教職員を対象に防災士資格の取得を支援。資格を持つ教職員は131人にまで増え、本年度は全53校のうち51校に配置している。
 県教委生徒指導・安全担当の下東義忠指導主事は「震災を経て、教員たちの生徒の命を守るという意識が強まった。いつ起こるか分からない災害に備え、学校は安全な場所でなくてはならない。今後も防災士を含め、専門性を持った教職員の育成を進めていく」と力を込める。

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