アメリカと日本では全然違う…子どもたちへの時事問題の伝え方

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。2月2日(火)放送の「オピニオンCROSS neo」では、令和メディア研究所主宰で白鴎大学特任教授の下村健一さんがアメリカに見る“日本の教育の問題点”について述べました。

◆議事堂占拠事件後、アメリカ教育界の見事な即応

今年1月に米前大統領トランプ氏の支持者が連邦議会を占拠した事件を受け、米Twitter社はトランプ氏のアカウントを永久停止。一連の事件から現在、SNSの発信のあり方が問われています。

この件に対し下村さんは、「民主主義の逞しさ、復元力のようなものが感じられる」と評価。そしてもう1つ、日本ではあまり報じられていませんが、アメリカの学校の先生たちの対応が実に素晴らしかったそうで、下村さんはその事例を紹介します。

議事堂占拠事件が起きた翌日、アメリカの「教育ウィーク」というサイトでは、この事件に関する教育に役立ちそうな論文や記事が数多く掲載されました。さらには、この事件について子どもたちに教え始めるための材料集もまとめられていて、これを活用するよう教員たちに向けて呼びかけも。

そこには事件に関する授業プランや個人の先生がSNSにアップした授業例のリスト、さらには多くの論文や記事、討論を促すためのプラン、そしてアメリカ教員連盟は「シェア・マイ・レッスン」というところで今やるべきことを紹介。

「シェア・マイ・レッスン」では、例えば「[○○]と聞いたとき、私は[○○]と感じた」、「これは歴史的出来事だ、なぜなら[○○]だから」などの設問が多数用意され、子どもたちが自分で空欄を埋めることで考えるフレームを提示しました。

また、NPO団体「コモンセンス・メディア」では、議事堂占拠事件について子どもたちに話すべきことを年齢別で紹介しており、「これは親御さんにとっても参考になる」と下村さん。例えば2~7歳の子どもには「できるだけニュースを消す」、「何か聞いてしまった場合は安心させる」など。

8~12歳の子どもに対しては、まずは何を見聞きしたのか、知っていることを聞き、そこから他の見方を示したり、友達や家族はどう感じたと思うか聞いたり、人種や背景が異なる人たちを含めて考えるように促しています。

さらに、13~19歳に対しては、他の歴史上の出来事と比べ、何が言えるのかを考えさせます。とりわけ下村さんが重要視していたのは、「ブラック・ライブズ・マター運動」のときと今回の事件で、警察の対応やメディアの報じ方、使う言葉に違いはないかなどを考えさせるという点。下村さんは、「黒人を中心とした動きとトランプ支持者が動いたときで何が違うのか。例として挙げられているのは、抗議者と言うか、暴徒と言うのか、そういったことを細かく見ておこうというガイドもある」と言います。

◆アメリカとは正反対の日本の教育界

こういったアメリカの動きと対照的なのが日本の教育界だと下村さんは指摘。自身の元には、メディアリテラシーに熱心な先生などから日々多くの問い合わせがあると言います。例えば、「何か授業で使える事例がないですか?」と聞かれたこともあるそうで、下村さんは「事例は山ほどある。でも、なかなかそれが教育に結びつけられていない」と悔やみます。さらには「架空の記事を作ってみました」という声には、「"現実の記事でやろう”と感じた」とも。

総じて下村さんは、アメリカはプラスの部分もマイナスの部分も全て学校の教室に持ち込み、差し引きゼロの中立を目指しているに対し、日本は現実を教室には持ち込まず、「ゼロの付近に張りついていようとする」と指摘。

しかし、そんな日本の教育界にも「希望の兆しがある」と言います。その1つが「メディア情報リテラシー研究会」というFacebookでのグループで、そこではアメリカの教育現場の状況が随時共有され、さらには教科書会社でも新たな試みが始まっていると下村さん。

例えば、光村図書ではコロナ問題をテーマに子どもたちに情報をどう受け止めたらいいかを動画で紹介。「今起きていることを教室と結びつけようという動きが日本でも始まりつつある。こうした動きに、ぜひ注目していきたい」と期待を寄せます。

MCの堀潤からは、なぜ日本の教育界で実例を挙げることができないのかについて質問が。下村さんによると、先生たちから聞いた話では"偏ってはいけない”という意識が働いてしまうそうで、「たとえ偏っても、逆の偏りも出し、全て見せることでバランスを取る力を付けていくことも大事」と主張。

ジャーナリストの長友佐波子さんは、日本の先生が恐れているのは「文科省」と推察。なぜなら終始文科省に監督され、何かまずいことを言ってしまうと自分たちの進退に関わってくるためで、「先生方を自由にするためには、文科省が減点主義をやめ、管理しようとするのを改めない限り難しいのでは」と見解を示していました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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