長崎市元職員の退職願無効 提出時の判断能力、考慮 地裁判決

 長崎市の元職員の50代女性が、市に提出した退職願は正常な判断能力がない状態だったため無効として退職の取り消しを求めた訴訟で、長崎地裁(古川大吾裁判長)は9日、退職の意思表示を無効とする判決を言い渡した。
 訴状によると、女性は持病の統合失調症が悪化し、2016年3月に作成し市に提出した退職願は無効と主張していた。
 判決では、女性の判断能力について、自身の置かれた状況を正確に把握したり言動の影響を判断したりすることができない状態だったと指摘。意思表示は無効で退職は取り消すべきだとした。女性側は市のメンタルヘルス対策などの安全配慮義務違反を主張していたが、市側に故意や過失は認められないとし、慰謝料などの請求は棄却した。
 女性の代理人弁護士らは市役所で会見。女性の父親は「ありがたい判決。これを機に障害者へ温かい光を当ててもらえるよう願っている」と述べた。女性側は控訴しない方針。
 市は「判決の詳細を確認した上で、今後の対応を検討していく」としている。

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