衝撃事実! 福島原発廃炉「30年後も無理」 燃料デブリ取り出しで大誤算

今回初めて取材できた福島第一原発3号機の側面-(提供・ジョー横溝-)

3・11――東日本大震災の津波が原因で起きた、福島第1原子力発電所(F1)の深刻な事故が起きて10年がたった。果たして廃炉作業は進んでいるのか? 6年連続で「フクイチ」取材を行ったラジオDJのジョー横溝氏(52)がその現状をリポートする。東京電力は「2050年」での廃炉を目標として掲げていたが、大幅な遅れが生じていることが判明。汚染水処理、デブリ(溶けた核燃料)の取り出しなどは難航しており「50年での廃炉が無理なことは東電関係者も認めています」と衝撃的な事実をジョー氏は伝える――。

ジョー氏は2021年2月23日にF1入りした。この1年で進歩があったのは「原子力建屋裏のガレキ処理」。ジョー氏は「非常にきれいになっていましたね。数年前から95%以上がグリーンエリア(平常の作業服で動けるエリア)になっていて、構内の環境は改善されています」と話す。

ただし、問題なのは、残り「5%」のエリアは放射線量が高く、作業は容易でないこと。東電は50年までの廃炉完了を掲げている。この10年で格納容器内に溶け落ちたデブリを取り出し、東電としてはそれを一つの成果として挙げる計画だったが、実際には「明らかに遅れています」とジョー氏。

まず、汚染水処理問題の“大きな見逃し”があったという。

デブリの冷却のためには大量の水が使われ、現在でも毎日約140トンの汚染水が発生している。

この汚染水を多核種除去設備(通称ALPS)で、トリチウム以外の62種類の放射性物質をろ過し「トリチウム汚染水」として、敷地内の巨大なタンクにためる方法が取られている。

現在設置されている汚染水タンクの容量は137万トン。これが22年秋までにいっぱいとなるために、海洋放出するか、蒸発させるか、議論が難航したままの状態だ。ところが、だ。

ジョー氏は「トリチウム汚染水の約7割が十分にろ過されておらず、放射性物質を含む汚染水のままであることが分かりました。そもそも、こんなに汚染水が出るとは思っていなかった。一時期、ALPSのフィルターの掃除などが滞っていた時期があったことが原因で、このようなことになっている」と明かす。

つまり、もう一回、ALPSを使い、ろ過作業をやらなければならないわけだ。

「二度手間になっているんです。時間が迫っているんです。僕はてっきり、たまっているものに関しては、次の工程としては『捨てる』だけかと思っていた」(同)

さらなる問題も浮上。「再ALPS処理水」をどこにためておくのか、ということだ。

「もう、敷地もいっぱいいっぱいな中で、これまでの7割のタンクというのは汚れていて、そこに水を入れるわけにはいかないですから。これは見落としていた大きな“穴”です。とにかく時間と場所が必要なのに…」とジョー氏は危惧する。

デブリの取り出しに関しても問題が山積み。2号機が先行して取り出し作業が進んでいたが、難航している。

「作業のための小型ロボット開発がイギリスで進んでいましたが、新型コロナ禍のために、思うようにいかなかった。予定では去年、耳かき1杯ほどの2~3グラムのデブリを取り出す予定だったがそれもできなかった。推定800トン、900トンのデブリが残っているのに」とジョー氏。

東電が示した工程表だと、デブリの取り出し着手という「第一歩」は21年内に終了する予定だったが、できそうもない。

ジョー氏は現地で東電の関係者に「第一歩が崩れると、ほかの作業にも当然影響する。(11年を起点にして)40年での廃炉は無理じゃないですか?」と質問した。返ってきた答えは「目標を作らないと廃炉ってできないので、それ(ロードマップ)はずっと掲げていたい」だった。

ジョー氏は「事故を起こした彼らが生きているうちに『廃炉』っていう希望がないと、後ずさりしちゃう。夢物語だとは分かっていても、心が折れないために『2050年廃炉』を掲げざるを得ないんですよ」と指摘した。

問題はまだまだ片付いていない。

© 株式会社東京スポーツ新聞社