【金鯱賞】デアリングタクト鋭い加速で〝新女王〟の貫禄 21年始動戦へ万全

鋭い加速を見せたデアリングタクト

昨年に無敗の牝馬3冠馬に輝いたデアリングタクトが第57回金鯱賞(14日=中京芝2000メートル)で2021年の始動戦を迎える。アーモンドアイなき今、新女王として見据えるのはもちろん世界、とりわけ凱旋門賞挑戦だ。一方で陣営からは前走のジャパンC3着の走りに疑念の声も…。さまざまなテーマを抱えて迎える復帰戦で新女王は威厳を示すのか、否か。10日朝に行われた最終追い切りに迫った――。

昨年は圧倒的な強さで史上初となる無敗での牝馬3冠を達成。ジャパンCではアーモンドアイ、コントレイルとの3強対決で3着と後れを取ったが、現役トップクラスの実力は誇示した。ただ、最後の直線で左へモタれる面を見せていて、その理由が自身よりも強い相手との対戦にあったのか、あるいは冬毛が伸びていたように寒い時期が苦手だったのか? 前回の敗因を見極める意味でも杉山晴調教師はJCと同じ左回りで行われる金鯱賞を2021年の始動戦に選んだ。

今年はコントレイル、さらに世界の強豪との対戦が待ち受けるだけに課題となる点をレースでしっかり修正しておきたいというのが杉山晴調教師の本音。今後は香港のクイーンエリザベス2世C(4月25日=シャティン)、秋には凱旋門賞(10月3日=パリロンシャン)を視野に入れているものの、コロナ禍の状況次第ではヴィクトリアM、天皇賞・秋、そしてジャパンCの国内GⅠへと目標が切り替わる可能性もあるだけに左回り克服は重要なテーマとなる。

注目の最終追い切りは主戦の松山を背に坂路での単走。1週前にしっかり追って当週は時計をそれほど出さずに軽めが同馬の通常パターンだが、「先週の動きからもう少し(強い負荷が)欲しいと思ったので反応を確かめた」と松山が話すように今朝はこれまでよりも意欲的に時計を出した。前半から速いラップを刻んで残り2ハロンを過ぎたところから一気に加速。鞍上の手綱は持ったままだったが、ラスト2ハロン24・7―12・2秒と尻上がりに加速、ゴール前は時計以上の鋭さでさすがの反応を見せた。もともとが使って良くなるタイプだが、当週にこれだけの負荷をかけられただけに態勢は整ったとみていい。

「先週は左へモタれる面を見せたけど、今朝は真っすぐ走れていた。ただ、いい時と比べるとまだ物足りなさはある。始動戦としてはまずまずの仕上がりだけど、前走から左へモタれる面が出てきて苦しくなるとそれが出やすい。中京の開幕週とはいえ、前開催は馬場が悪かった。ほかの競馬場よりもモタれやすいと思うので乗り越えてほしい」と松山は課題クリアに期待を寄せる。対コントレイル、そして世界戦を控える新女王にとって今回は今後の方向性を占う重要な一戦となる。

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