<社説>東日本大震災10年(3) 課題克服へ共に進もう

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から11日で10年を迎えた。 巨大地震、大津波、原発事故という未曽有の「複合災害」だった。津波被害が甚大だった岩手、宮城、福島3県を中心に死者、行方不明、震災関連死は計約2万2千人に上る。復興庁によると、東京電力福島第1原発事故などで計約4万1千人が今も避難中だ。

 あらためて犠牲者のご冥福を祈り、遺族や被災者にお見舞い申し上げたい。

 被災地は「孤独死」の問題や被災者の心のケア、地域コミュニティーの離散、教訓の継承など課題は多い。ところが復興財源のうち被災者支援に費やされたのは1割に満たない。住宅再建やインフラの復旧は進んだが、生活再建を支援する「人間の復興」は終わったとは言えない。原発事故も収束していない。山積する課題克服に向けて被災地と共に考え共に進みたい。

 2月13日夜、福島県沖を震源とする最大震度6強の地震が発生した。10年前の巨大地震の余震だという。専門家は「少なくとも今の状態はあと10年は続く」と指摘する。

 岩手、宮城、福島の被災3県の仮設住宅や災害公営住宅で、独り暮らしをしていて亡くなった人は、2011年から昨年までの約10年間で614人に上る。うち65歳以上の高齢者が68.4%を占めている。多くは誰にもみとられずに亡くなる「孤独死」とみられる。

 大震災の犠牲者のうち65歳以上が約6割を占めた。10年後に生存者が高齢化し「孤独死」する現状は、やりきれない。被災者の見守りやケアに国は手厚く支援すべきだ。

 共同通信が昨年11月に被災した3県で実施したアンケートによると、テレビを見ているときに急に思い出したり、当時の夢を見て自分を責めたりすることがあるという声が上がった。

 沖縄戦体験者の約4割が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症しているか、発症する可能性が高い深刻な心の傷(トラウマ)を抱えている。大震災で大切な人を失い、原発事故でふるさとを失った人々には沖縄と共通点があると指摘されている。息の長い心のケアが必要だ。

 また「震災が風化していると感じるか」という質問に78%が「感じる」「どちらかといえば感じる」と回答している。大震災の記憶を風化させないために様々な取り組みが必要だろう。

 例えば3県は、被災した校舎やホテルなどを「震災遺構」として保存している。沖縄戦の「戦争遺跡」と同様に、これから大震災の教訓を受け継ぐために「震災遺構」の存在は欠かせない。教訓を伝える活動はますます重要になる。沖縄と連携して取り組んでほしい。

 「この先のために今がある。どんなに苦しくても希望しかない」と前を向く、被災地からの声を心に刻みたい。

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