WTCRの元eシリーズ王者、ミケリスのサポートプログラムで現実世界のチャンスを獲得

 2020年に開催されたWTCR世界ツーリングカー・カップのeスポーツシリーズ『pre-season Esports WTCR(プレシーズン・EスポーツWTCR)』で、初代チャンピオンに輝いたM1RA Eスポーツ・チーム所属のゲルゲ・バルディが、現実のWTCRで2019年王者を獲得している地元の英雄、ノルベルト・ミケリスが立ち上げた新イニシアチブの一環として、2021年に本格的なTCRプログラム挑戦の機会が与えられることとなった。

 師弟関係にあるミケリスの新プロジェクト“#NextMichelisz”を通じて、リアルでのチャンスを手にしたバルディは、ミケリス同様に従来のモータースポーツ界のステップアップ・ルートとは異なる道筋で、ツーリングカーレースの世界に足を踏み入れることが決まった。

 EスポーツWTCRの戦果を経て再び仮想空間での選抜テストに挑んだバルディは、次のステップに進む5名のドライバーのひとりに抜擢された。そして、実際のヒュンダイi30 N TCRをドライブする前に一連の身体的および心理的テストを受け、その適正評価をくぐり抜けてきた。

「そう、かつての僕がそうだったように、ハンガリーでレーシングドライバーになることに興味を持っているすべての人にチャンスを与えたかった」と、新プロジェクトの目的を明かした元WTCR王者のミケリス。

「若くて才能があり、興味を持っているドライバーが何人いるかを確認するのに、コストが低く非常に効率的な手法のオンライン・チャンピオンシップを実施することにしたんだ。5000人を超える参加者があったし、そのことをとても誇りに思うよ」と続けたミケリス。

「今回のオンラインチャンピオンシップは、EスポーツWTCRとおなじコンセプトを採用した。RaceRoomを使用して5戦の仮想イベントを開催し、バーチャルシリーズの終わりに上位5名のドライバーを2番目のステップに進めたんだ」

2020年に開催されたWTCR世界ツーリングカー・カップのeスポーツシリーズ『pre-season Esports WTCR』で、初代チャンピオンに輝いたゲルゲ・バルディ
M1RA Eスポーツ・チームからエントリーしたその仮想空間では、師匠のヒュンダイi30 N TCRをドライブした

■バルディはWTCRへのワイルドカード枠参戦も排除せず

「その5名は現実のラボに連れられ、一種の測定を実施した。彼らは多くの物理的、心理的測定を行い、これら5種目から基本的なデータを収集した。そして次のステップは、ハンガロリンクを2日間借りての実践ドライブだ」

「彼らはまずベーシックなロードカーのステアリングを握ることから始め、2日目には僕のチームであるM1RAのTCR規定レースカーをドライブした。最終的に、このコンテストを制したのはゲルゲ・バルディだったよ」

「驚くべきことではなかったけれど、ゲルゲは仮想のヒュンダイを速く走らせるだけでなく、ハンガロリングで自分自身を証明する機会にも、非常に冷静で説得力あるドライビングを披露してくれたんだ」

 今後バルディは、いずれかのTCRシリーズでM1RAからエントリーする予定だというが、ミケリス自身は早い段階での「WTCRへのワイルドカード枠参戦」の可能性も排除しないことを明かした。

「彼の未来に何が起こるかを決めるのは、基本的に共同チーム代表であるダビド・ブリの仕事だが、その件に関しては僕の考えとほぼおなじであることを知っているよ」とミケリス。

「ゲルゲは可能な限り最高レベルのコンペティションで、その才能を証明することができる逸材だ。予算確保という課題もあるが、彼はいくつかの国際格式レースで戦うことができるはずだ」

「これは複数年計画であり、僕らは彼をサポートする必要がある。初年度に自分自身の速さを証明できた場合、僕らの仕事は上を目指すための予算獲得に焦点が移ることになる。1年だけでは意味がないし、それが僕の責務だ。僕の履歴書には“世界チャンピオン”の肩書きがあり、ゲルゲのような才能が成長し、その成功を助ける役割があると思っている」

自身もバーチャルレーサーとしてチャンスを掴み、現実のWTCRまで上り詰めたミケリス
2021年にもいずれかのTCRシリーズでM1RAからエントリーする予定のバルディだが、WTCRへの参戦も実現するか

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