ロッテの「育成の星」となるか 本前郁也、飛躍の鍵を大隣2軍投手コーチが分析

ロッテ・本前郁也【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

背番号「120」の本前は今年のキャンプで1軍に帯同した

活きのいい若手投手が集うロッテにおいて、この春、一段と存在感を色濃くしたのが、背番号「120」の本前郁也投手だ。2019年育成ドラフト1位で入団した左腕で、投げっぷりの良さが身上。昨年は2軍で11試合に投げ、2勝無敗、防御率2.56の数字を残した。

今春のキャンプでは1軍が石垣島を離れ、沖縄本島へ向かう際、帯同メンバーに名を連ねた。練習試合では2月24日のソフトバンク戦に登板。4年連続日本一の“王者”を相手に、3イニングを完全投球で封じ、注目を浴びた。そして、きょう3月11日の楽天とのオープン戦(静岡)に先発して3回を1安打無失点。支配下登録にまた一歩近づく投球を見せた。

ゆったりとした力感のないフォームから140キロ台後半の直球を投げ込む。その投球フォームは、現役時代の大隣憲司2軍投手コーチにも似ているという声も。昨季、入団1年目の左腕をすぐ側から見ていた大隣コーチは「持ち味は低めに来るボール」と評する。

「高めでも空振りが取れたりファウルが取れたりする時は、本前の調子がいい時だと思います。本当にバッターとして打ちにくいのは、外の真っ直ぐ低めがしっかり決まっている時。やっぱり左(打者)の外だったり、右(打者)の内だったりがしっかり投げきれないと、まだ厳しい部分はある。そこは低めのスライダーやカーブでは、バッターとして怖さはないと思うんですよね。抜けて真ん中に集まることもあるので」

同じ左腕だけに、大隣コーチの分析は細部にわたる。1年目ながら2軍で好成績を残した昨季だが「抜け球が多くてカウントを悪くして、そこから(崩れる)ということが多かった」と話し、解決策として下半身に意識を置いたトレーニングを積み重ねたという。

「だんだん下半身主導のフォームで投げる感覚が出てきた中で、オフには(ソフトバンクの)和田(毅)さんの自主トレに参加して、感じる部分がすごくあったと思います。元々、考え方は真面目な子なので、上手いこと自分に必要な部分を吸収して、いらない部分は省きながらやっていければいいですね」

ロッテ・大隣憲司2軍投手コーチ【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

ブレークの鍵は「やはり真っすぐありきなのかと」

特徴でもある大きく曲がるスライダーに加え、カーブ、チェンジアップも操る。だが、本前が育成から支配下に昇格し、さらに活躍の場を広げるために鍵となるのは、「やっぱり外角低めに真っ直ぐを投げるコントロールじゃないかと思うんですよね」と話す。

「球速も出ますし、フォームに力感がない分、バッターはスピードガンの数字より速く感じると思います。だからこそ、本前は真っすぐありき、なのかなと。意外と左(打者)の被打率が高いのは、高めに甘く入ったボールを打たれている可能性が高い。左(打者)の外角低めが決まるようになって、レベルアップしていければ、上(1軍)でも勝てる投手になるんじゃないかと思います」

春の段階で首脳陣へのアピールが成功しているだけに、今シーズンは今後の鍵を握る1年になりそうだ。「本当に期待はしている。今年なんとか結果を出していければ、これから先は明るくなるんじゃないかと思います」

小島和哉、中村稔弥、今季ドラフト1位入団の鈴木昭汰ら、先発を担う若手左腕がひしめく中、どうやって自分の色をアピールしていくのか。ロッテ育成の星になるべく、本前郁也の挑戦は続く。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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