あなたも誰かに見張られている!? ストーカー事案の現実と今後

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。2月4日(木)放送の「オピニオンCROSS neo」では、弁護士の横山智実さんが“ストーカー規制法改正”について述べました。

◆ストーカー行為の"つきまとい”とは

警察庁はストーカー行為に関する有識者検討会の報告書を公表。GPS機器を使って相手に無断で位置情報を取得することを規制対象に加えることなどを提言しており、警察庁はストーカー規制法の改正案を通常国会に提出する方針だということです。

今回の背景には最高裁の判断があると横山さん。それは福岡地裁で審議された事件で、加害者は避難中の妻の車にGPS機器を取り付け、約20日間で181回位置情報を入手。そして住処を特定し、密かに写真を撮影していました。また佐賀県でも同様の事件があったものの、最高裁はこの事案に対し「ストーカー規制法の見張りには当たらない」との判断を下しました。

この見張りにあたるストーカー規制法で規制される「つきまとい等」の行為とは、「つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他、その通常所在する場所(住居等)の付近で見張りをし押し掛け、住居等の付近をみだりにうろつくこと」。しかし、「相手の家の付近など一定の距離のところからでなければ見張りではない。GPSを付け、そのデータを自宅で見るのは家近くで見ているものではない、という最高裁の判断」と横山さんは解説します。

刑法では何が犯罪となり、それに対してどのような刑罰が課されるのか予め規定されていなければならないというルールがあり、類推解釈は禁止。さらには条文の文言に忠実かつ厳格に判断するのが原則で「最高裁も『通常所在する場所の付近』を厳格な判断をしたという意味で、正しい判断という評価はできる」と横山さん。

なぜなら類推解釈を可とするとさまざまなことが犯罪にあたり、逆に国民の自由や権利がなくなってしまうため、「この判断も仕方がない」と言います。ただ、GPSによる被害があるのも現状で、「法律の解釈論で解決できない以上、法律を改正する必要があるというのがこのニュースの意味」と指摘。

◆繋がりやすい社会ほど覗き見されやすい…

では、警察庁はどう改正するのか。例えばGPSアプリを無断でスマホにインストールしたり、SNSを見て居場所を把握したり、インターネット上で公開されている行事予定を把握して押しかけるなどが想定されるため、「これらに対応する形で、相手方の承諾を得ないで行う行為を規制の対象にしたり、場所要件の見直し、被害者が現に存在する場所における見張り等についても規制の対象としようという流れに向かっている」と明示します。

2019年のストーカー事案の相談等の件数は約2万件あり、被害者と加害者の関係性を見てみると「面識なし」と「関係不明」の合計が約16%にもなり、横山さんは「ストーカーになるような人は周りにいないと安心している方も、SNSやマッチングアプリで一方的に目をつけられている可能生は高い」と警鐘を鳴らします。そして、改めて自分の情報を公開する範囲や過去の投稿の見直しを提言。さらには、「繋がりやすい社会ほど覗き見されやすい。自分の身は自分で守れるので、まずはそういうところを見直してほしい」と訴えます。

一方、元厚労省官僚で株式会社千正組代表の千正康裕さんは、技術の進歩に合わせ法律を変えていくのは必須とし、「それは裁判所ではなく国会の仕事」と明言していました。

番組では、視聴者に「携帯のGPS(位置情報)いつもONにしていますか?」というテーマで生投票を実施。結果は以下の通りです。

◆携帯のGPS(位置情報)いつもONにしていますか?
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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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