<3.11 未来へつなぐ> “都市防災”東京の防災対策、最前線に迫る!(前編)

東日本大震災の発生から10年がたちました。東京を近い将来襲うといわれている首都直下地震や、都内の島しょ部にも甚大な被害をもたらすと予想されている南海トラフ地震などに対する「都市防災」について、東京の防災対策の“今”を取材しました。

東日本大震災で東京都内は最大震度5強を観測し、物につかまらなければ立っていられないほどの揺れが起き、ライフラインにも大きな影響が出ました。都内は多くの帰宅困難者であふれ返りました。近い将来、首都直下地震も起こるとされています。

首都圏でマグニチュード7クラスの地震は、30年以内に70%の確率で発生するとされています。もし今、東京を巨大地震が襲ったらどうなるのでしょうか。内閣府が作成した首都直下地震のシミュレーションでは、ビルの窓ガラスが割れ、木造住宅の密集地域では家屋が倒壊、さらに同時多発的に火災が発生し、道路や鉄道など交通インフラもまひすると想定されます。湾岸地域では道路が水であふれ返り、ライフラインにも被害が発生するとされています。都心には郊外や他県からの通勤通学者も集中していることから、多くの帰宅困難者の発生が予測されます。

<湾岸エリア タワーマンションの避難所は?>

巨大地震に対し、東京の防災対策は今、どうなっているのでしょうか。まず、人口急増エリアの避難所の現状を取材しました。江東区の豊洲エリアは、この10年で大規模な再開発が進み、タワーマンションや商業施設なども立ち並び、街の姿を大きく変えました。「子育てしやすい街」として注目も高まっています。しかし、その一方で懸念されるのが「避難場所の不足」です。人口が急増し続ける街に、住民からは「避難所が足りないでしょうね。マンションに住んでいるが、じっとしているしかないのかなと思っている」「自分の家の中で数日分の食料と水を確保している。正直、避難所のキャパシティーが合っているのか不安」など、避難場所への不安の声も聞かれました。

現状はどうなっているのでしょうか。江東区は人口53万人に対し、避難者数を15万人と想定しています。38万人の区民には「在宅避難」を呼び掛けていて、自宅で避難生活ができるよう、日頃の備蓄の必要性を訴えています。備蓄する量の目安は「72時間」です。区の担当者は「食料・水は3日分、最低用意いただきたい。行政は発災から72時間は身動きが取れないといわれている。72時間を過ぎたあたりからいろいろな救援物資などが届き始める状況になるので、日頃から自分の命は自分で守る、いわゆる『自助の精神』の心構えを持って避難行動に結び付けてほしい」(江東区・危機管理室 松村浩士防災課長)と訴えます。

一方、区では家庭内で安全が確保できない区民に対しては、区立の小中学校69カ所を拠点避難所として開放し、その後、区内の文化センターやスポーツセンターなど想定する数の避難者を受け入れられる避難所が開設されるということです。区では避難所における新型コロナ対策として、折り畳み式の簡易テントも導入しました。このテントは家族4人が入れるほどの大きさで、感染対策とともにプライバシーも守れます。

<帰宅困難者対策 「無理に帰宅しないで」>

次は「帰宅困難者対策」についてです。10年前の東日本大震災で、東京都内では多くの街で帰宅困難者があふれました。首都直下地震が発生した場合には、この時より多い最大490万人の帰宅困難者が発生すると試算されています。内閣府は混乱や危険を避けるため「無理に帰宅するのではなく、その場にとどまることも大切」と呼び掛けています。

そうした中、民間でも災害に強い街づくりを掲げ、東日本大震災以降、帰宅困難者に対する対策を強化する事業者が増えています。

後半では「『逃げ込める街』を目指す商業施設の防災対策」や「島しょ部の津波対策」についてまとめました。どうぞご覧ください。

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