藤原、安田に続く新たなブレーク候補…ロッテ・山口航輝が期待されるチーム事情

ロッテ・山口航輝【写真:荒川祐史】

昨季は2軍で全試合に出場し、4番打者として奮闘

安田尚憲内野手、藤原恭大外野手に次ぐ、ロッテの新たなブレーク候補の台頭だ。オープン戦で4番打者として奮闘を続ける山口航輝外野手が、3月11日の楽天戦で待望の1号を放った。昨季は安田が若き4番として出場を重ねたが、今季は安田よりひとつ年下の山口が、同様の抜擢を受ける可能性がありそうだ。

山口は、藤原と同期の高卒3年目の野手。昨季まで1軍出場は1試合もなかったが、プロ1年目の2019年から2軍で積極的に起用されており、2020年にはファームの4番打者を任された。こういった起用法からも、球団からの大きな期待がうかがえる。

そんな山口が過去2年間で記録した2軍での年度別成績は下記の通り。

2軍での年度別成績【表:PLM】

2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で2軍の試合数が大きく減少したこともあり、試合数自体は前年に比べて減少している。しかし、昨季のロッテが戦った2軍戦は全部で70試合であり、山口は全試合出場を達成している。安打、本塁打、打点、四球といった各種の数字は試合数の減少にもかかわらず向上し、進歩の跡も感じられる。

前年との比較をすべく、2020年の2軍成績を前年と同じ114試合に換算した表を紹介していきたい。

2020年の2軍成績を前年と同じ114試合に換算【表:PLM】

各種の成績は約1.6倍に上昇。数字の面でも成長がうかがえる。出塁率や四球の向上は、プロ初年度は課題のひとつだった選球眼も改善を見せつつあることがわかる。

しかし、昨季途中に1軍選手の中で新型コロナの集団感染が発生したことにより、2軍選手の大半が1軍に昇格する一幕があった。その中で、山口は2軍で4番として一定の活躍を見せながら昇格の声はかからず。今季は満を持して1軍定着に挑むシーズンでもある。

藤原とは奇しくもOPSがまったく同じ数値

オープン戦の初戦となった3月2日のオリックス戦では適時打を含む2本の二塁打を放ち、続く3日の同カードでも二塁打を記録。開幕ローテーション候補の1投手を相手にしても物怖じすることはない。オープン戦序盤では、4番という看板に負けない奮闘を見せている。

山口は登録上では外野手だが、今季の練習試合やオープン戦では一塁手として起用されている。昨季は菅野剛士外野手と岡大海外野手が外野と一塁を兼任しながら出場機会を確保したが、山口も同様に、プレーの幅を広げていけるかにも注目だ。

2019年に2軍で4番を務め、2020年は1軍でも4番として出場を続けた安田に続く存在として期待されている山口。とはいえ、2019年に2軍で本塁打王と打点王の2冠に輝いた安田に比べれば、2020年の山口の2軍成績は、やや不足している部分があったのも事実だ。

ただ、終盤に昇格して1軍の舞台でもインパクトを残した藤原が、昨季の2軍で残した成績と比較すると、また違った見方ができる。山口と藤原の2020年の2軍成績は、それぞれ下記の通りだ。

山口と藤原の2020年の2軍成績【表:PLM】

出塁率や本塁打のペースは藤原の方が上だったものの、打率や打点は山口が上回っている。また、OPSは奇しくも全く同じ水準だ。昨季の藤原は1軍での26試合で3本塁打を放ち、打率.260、OPS.707と、打撃面で一定以上の存在感を放った。2軍での成績を鑑みるに、山口にも同様に、一軍で活躍ができるだけのポテンシャルはありそうだ。

首脳陣の期待に応え、一気に一軍定着とブレイクを果たせるか

また、藤原は身体能力を生かした守備や積極的な走塁も持ち味としているが、山口の場合は打撃面が最大のセールスポイントになる。出塁率や盗塁といった数字が高かった藤原と、打率や打点といったポイントゲッターに必要な成績で上回った山口。それぞれ、選手としてのタイプに沿った成績を残している点も興味深いところだ。

さらに、中長期的なチーム編成という面でも、山口がブレークを果たせるか否かは重要な意味を持ってくる。藤原に加え、代走や守備固めとして1軍で活躍した和田康士朗外野手(22歳)、2軍で最終戦まで首位打者を争った高部瑛斗外野手(23歳)という2人の若手がいるとはいえ、荻野貴司(35歳)、清田育宏(35歳)、角中勝也(33歳)、福田秀平(32歳)と、現在の外野手の主力の多くは30代となっている。

加えて、それに続く年齢層の外野手に目を向けると、加藤翔平(29歳)、岡(29歳)、菅野(27歳)と、20代後半の選手が顔を揃える。さらに、外野手最年長である荻野と清田選手を除くと、20歳以上の支配下登録の右打ちの外野手は、岡と山口の2人のみ(加藤選手は両打ち)。すなわち、外野の若返りを図る上でも、山口が一本立ちするか否かは、大きなウエートを占めてくることが考えられる。

一塁手は打力が重視されるポジションなだけに、求められる打撃成績のハードルも、ほかのポジションに比べて高くなる。加えて定位置争いのライバルには、過去3年間にわたってチームの主軸を務めた長距離砲の井上晴哉内野手が存在。さらに、昨季はケガで39試合の出場にとどまった、NPB通算169本塁打のブランドン・レアード内野手も復活を期している。山口が開幕1軍に残るための競争は、これからより熾烈さを増してくることだろう。

これまで1軍出場がなかった立場から大きくステップアップする可能性を秘めているだけに、あとはこのままアピールを続け、そのチャンスを掴み取れるかどうか。若手の台頭が目立つマリーンズから、また新たな新星が生まれるか。若き4番が見せる思い切ったスイングに、今後も要注目だ。

【動画】オープン戦で猛アピール 山口がオリックス戦で放った二塁打

【動画】オープン戦で猛アピール 山口がオリックス戦で放った二塁打 signature

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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