【MLB】加藤豪将、試行錯誤で手にした打撃 “8度目の春”で目指す悲願のメジャー昇格

パドレス・加藤豪将【写真:Getty Images】

パドレスとマイナー契約を交わした加藤はオープン戦で猛アピールを続ける

パドレスとマイナー契約を交わし、招待選手としてキャンプに参加している加藤豪将内野手が12日(日本時間13日)、敵地でのアスレチックス戦で2度目の先発出場。指名打者として3打席に立ち快音は発せられなかったが、2度の盗塁を試みる積極的な走塁でアピールした。【木崎英夫】

ここまで出場した10試合で3ランを含む6安打を放ち、打率を4割に乗せていた加藤がオープン戦初のDHを任された。結果は、空振り三振、左飛、遊撃失策、死球で快音は発せず。しかし、出塁後はいずれも、二塁へ土を蹴った。2度目は阻止されたが、果敢な走塁は機動力向上を目指すティングラー監督のチェックポイントの一つ。

タティスJr.、マチャド、ホズマー、マイヤーズらを擁する強力打線が売りのチームだが、ティングラー監督は大味な野球を決して好まない。コロナ禍で60試合に短縮された昨季、チームの盗塁数は2019年の8位(70個)から一気にリーグトップ(55個)へと跳ね上がった。就任1年目で14年ぶりのプレーオフに導いた指揮官の手腕には走塁の意識付けもあった。貪欲に次の塁を狙う加藤の姿に目尻を下げる指揮官の顔が浮かぶ。

朝の監督会見に先立って行われる選手とのオンライン会見で、この日登場したのが加藤だった。サンディエゴの高校出身とあって、地元でメジャーデビューを飾る夢や、少年時代に見たイチローの打撃に衝撃を受け、左打ちに変えたエピソードなどを淀みなく紡いでいった。そして、打撃についてこう話している。

「自分のスイングがメジャーレベルで通用するかどうか。これにずっと重点を置いて取り組んできましたが、オープン戦開始後1週間は経たないとどうかは分からないと思っていたので、自信を高める結果が早々に出て嬉しいです」

オンライン会見に臨んだパドレス・加藤豪将(写真はスクリーンショット)

ティングラー監督も称える打撃フォーム「見事なインサイドアウトのスイング」

重点を置いてきたこと――。昨年の3月のこと。ヤンキース傘下のマイナー3AからFAでマーリンズとマイナー契約を交わした加藤は、フロリダのキャンプ地でその“重点”を明らかにしている。サンディエゴの自宅近くに住むフィル・プランティア氏(元ヤンキース3Aコ―チ)の指導を仰ぎ、試行錯誤を重ねた。

「筋肉の強さや骨格そのものがこちらの選手とは違います。でも、柔軟性では劣っていません。オフの間、ほぼ毎日フィルの自宅に通って柔軟性を生かしたスイングを模索しました。三振をしてもそのスイングができているので納得できています」

1年を経て、さらに改良を施した――。バットを左肩に乗せ最後は右手だけの片手フォロー。強化した体幹を意識し、骨盤と上体をよりスムーズに連動させたフォームをティングラー監督は「見事なインサイドアウトのスイング」と称えている。右肩の開きを抑えたバットの軌道は、3日のブルワーズ戦で放った左中間への3ランにしっかりとつながっている。

2013年にカリフォルニア州サンディエゴのランチョ・バーナード高校からヤンキースに2巡目でドラフト指名されてから迎える8度目の春。一塁、二塁、遊撃と複数のポジションに代走、代打もこなす。悲願のメジャー初昇格へ、加藤豪将の猛アピールは続く。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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