日経平均3万円突破 バブル崩壊が恐いから投資を始められない、という人に伝えたいこと

2月15日、日経平均株価が1990年8月以来となる3万円の大台を回復しました。株式市場だけでなく、ビットコインが初めて5万ドルを超えるなどもあり、投資界隈は浮ついた雰囲気も出ています。その一方で、身の回りではコロナの影響で飲食店が潰れたり、職を失う人がいたりと、どうも相反する景色が広がっています。

この違和感からバブル崩壊に警鐘を鳴らす記事も多く目にします。その結果、投資に興味を持ったものの、バブル崩壊に巻き込まれたくない、始められないとの声も聞きます。このような経済状況では、どのようなスタンスで投資に臨めばいいのでしょうか?


実体経済と株価は乖離しているか?

バブル崩壊を懸念する人の多くが使うのが、「実体経済と株価の乖離」というフレーズです。前述の通り、たしかに株式市場は好調です。

SNSを見ていても、「いくら儲かった」と景気のいい書き込みも散見されます。一方で、街中を歩けば閉店した店舗が散見され、20時以降になれば都内はどこの飲食店も閉まっています。このような光景を目にすれば、現在の株高は明らかにおかしいと思う気持ちも分かります。しかし、言葉の定義をせずに雰囲気で語ることはやめましょう。

実体経済とは何を指しているのでしょうか?おそらく、近所の商店街や飲食店の様子を指しているのだと思います。そして、株価とは何を指しているのでしょうか?おそらく日経平均株価を指しているのだと思います。

日経平均を構成するのは選び抜かれた企業

経済産業省が発表した「平成28年経済センサス‐活動調査(確報)」によれば、日本にある企業の数は約385.6万社。そのうち、個人経営を除く法人は187.7万社です。

一方、証券取引所に上場しているのは約3,700社。その中から選び抜かれた225社で構成される株価指数が日経平均株価です。上場している企業がえらいわけではありません。しかし、上場しようとするならば、上場を申請する前の2年間は監査を受けなければならず、監査前に求められる準備や内部体制の構築などを考えると、上場するだけで何千万円ものコストがかかります。少なくとも上場企業はそれらの経済的な負担に耐えられるだけの企業だということが分かります。

この数字だけを見れば、日経平均株価が実体経済を正確に反映することなど、ありえないと分かるでしょう。何も新型コロナウイルスの感染拡大に伴って生じた自体ではなく、そもそも株価だけで実体経済を語るのがおかしいのです。

日経平均だけで全てを語るのは無理

また、日経平均株価はかなり歪みのある株価指数だと考えます。日経平均株価の構成比率を見てみると、ユニクロを運営するファーストリテイリングが1銘柄だけで13%を超えており、ソフトバンクグループが約7.5%、東京エレクトロンが約5.5%、ファナックが約3.3%です。上位の銘柄だけでかなりの影響力を持っていることが分かります。

この結果、日経平均株価が前日比でマイナスなのに、株式市場全体では値上がり銘柄数の方が、値下がり銘柄数よりも多いということはよくあります。こう考えると、株価が実体経済を正確に反映することもなければ、日経平均株価が株式市場の状態を表しているとも言えません。

このように考えると、日経平均株価だけを見てバブル崩壊と騒いだり、景気について語ったりすることがいかにおかしいかが理解できると思います。ところが、専門家と呼ばれる人でさえ日経平均株価の動きを引用して金融政策について語ったりしているのが実情です。

肩書きが立派な人がそれっぽいことを書いていると、ついつい鵜呑みにしてしまいがちです。しかし、意見の基になっている数字の内容や性質をしっかりと理解したうえで、自分の頭で考える習慣を身に付けましょう。

株価だけで判断するリスク

人間はついついキリのいい数字に意味を求めがちですが、それは株価も同じのようです。メディアでバブル崩壊に警鐘を鳴らす記事を目にする機会が増えたのは、やはり日経平均株価が3万円という大台を超えてからだと思います。しかし、株価は企業の業績や保有資産、今後の成長性など複数の要因から形成されます。

極端な話をすると、業績がずっと伸び続け、今後もその成長が期待できると投資家が思うのであれば、3万円だろうが、4万円だろうが株価も上昇し続けるわけです。キリのいい数字に達するたびに、利益を確定する動きも見られますが、裏付けとなる業績や期待感があるのであれば、買いに入る投資家もいるわけです。

そう考えると、株価という表面的な数字だけで判断するのはおかしく、企業業績やPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などの株価指標、為替や金利の水準など、複数のデータに目を向けて、総合的に見ていく必要があるのです。

始めたいと思った時がタイミング

株式市場が絶好調というニュースを見て投資をしてみたいと思ったけど、バブル崩壊に巻き込まれたくないから始められないという声を聞きます。しかし、この考え方では、投資における前提がそもそも間違っていると思います。

私も含め、誰にも将来を正確に予測することは出来ません。様々なデータを見るようにと書きましたが、どれだけ時間をかけて調査や分析をしたところで、将来は分からないのです。

多くの記事が警鐘を鳴らすように、今の株式市場はバブルで早々に崩壊するかもしれませんし、このまま好調を続けて上昇していくかもしれません。そう考えれば、株式市場が暴落するまで投資を始めないというのは、無意識のうちに自分は安値で仕込めるという自信があるのかもしれません。

1日の間で何回も取引するとか、数日しか保有しないという投資スタイルならいざ知らず、資産形成を目的として長期的な投資をするつもりなのであれば、始めたいと思った時に小額から始めてみるのがよいのではないでしょうか?

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