バッド、グラブなしのオンライン〝弁論甲子園〟開催「コロナ禍でも高校野球の目的は失われない」

優勝した狭山清陵高校の双子のマネジャーのプレゼン場面(写真提供=「春の甲子園大会2021」大会事務局)

バットもグラブも持たない高校球児やマネジャーたちによるオンライン弁論大会「春の甲子園大会 2021」が14日に行われ、「目的の甲子園」をテーマに思い思いの言葉を披露した。

昨年からの新型コロナウイルス禍で、思うような活動ができずに悔しい思いをしている高校球児たち。そんな彼らに野球の試合ではない、別の形で高校野球生活への思いをプレゼンする場として、昨年8月に第1回大会がオンライン開催された。

第2回となった今回は全国から校以上がエントリー。大会時間の制約により選抜された8校のみが本戦へ駒を進めたが、元日本ハムヘッドコーチの白井一幸氏らがコメンテーターとして見守るなか、出場した〝選手〟たちの眼差しはバットとグラブこそ持たないものの真剣そのものだ。

優勝したのは双子のマネジャーがプレゼンした埼玉県立狭山清陵高等学校だ。2人は単なるマネジャーではなく、練習や学校生活の様子から選手個々の性格や特徴をメモに取り、監督の言葉を直接ではなく、それぞれの性格に合わせて伝える橋渡し役としての思いが評価された。

6人のコメンテーターからは「今すぐ秘書として雇いたい」との言葉も出るなど、社会に出ても通用する有能さも光った。

大会委員長を務める川島敏男氏は「甲子園は高校野球の目標であって、コロナ禍でも高校野球の目的は失われない」として、〝オンライン甲子園〟の意義をこう話す。

「高校野球の目標は、高校球児みんなが言うように甲子園優勝。それが昨年はコロナでなくなり、すべての高校球児が突然、暗闇のなかに突き落とされた。しかし、高校野球の目的は人生における大切な武器、つまり人間力を手に入れることで、その目的はなくなってはいない。じゃあ、みんなが高校野球を通して何を学び身に着けたのか、それを発表する場にしたかった」

実際、高校球児のなかにはただひたすらに野球漬けの毎日を送って、社会に出てから目標を見失ってしまう元高校球児たちも少なくないという。そういった不幸をなくすためにも、川島氏はオンライン甲子園という舞台を設けた。

今回の大会運営には第1回大会の参加学生たちも携わっており、さらなる大会の充実が期待される。ゆくゆくは日本高等学校野球連盟との共催も視野に入れているといい、今後、高校球児たちの新たな〝甲子園〟として夢の舞台になるかもしれない。

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