タレント・片岡鶴太郎(66)の次男で、画家・アーティストの荻野綱久氏が注目を浴びている。神獣をモチーフとした色彩豊かな絵が話題を呼び、ペルシャじゅうたん絵師、アクリル板アーティストなど様々な顔を持つ。父・鶴太郎の〝予言〟に導かれ、絵の世界に飛び込んだ綱久氏の素顔に迫った。
綱久氏は男3人兄弟の次男。長男・貴匡氏は飲食チェーン店の代表取締役。三男・聡士氏も料理人とそれぞれが異業種で才能を発揮している。
鶴太郎家の教育方針はいたってシンプル。「父は『自分が好きなこと、楽しいと思えることを追及しろ』とよく言ってました。『やりたいと思ったことをとりあえずやれ』、その一言です」
綱久氏は10代の頃から音楽に没頭し、ロックバンドを結成。バンド活動をしていたが壁にぶつかった。「父は、ぼくが音楽でやっていけるのかと不安があった。それが伝わってきてすごくプレッシャーだった」と振り返る。できるだけ顔を合わせないように避けていた時期もあったという。
悶々とした日々が続くなか、26歳の時に突然、父から声を掛けられた。「綱久も感じるものがあるから見てみれば」。現代美術家で知られる草間彌生氏のドキュメンタリーDVDを手渡された。
「本人は気付いてないけど、父はたまに予言めいたことを言うんです。その発言をしてるときの父ってなんか不思議なオーラをまとっていて、それが見事に的中する」
草間氏から「ロックに目覚めた時のような衝撃」を受け、衝動的に絵の世界に導かれたという。避けていた父のアトリエに足を運び一緒に描いた綱久氏。ただ、「絵に関しての影響はほぼ皆無」で作風は父と一線を画し、描くのは鳳凰や龍といった神獣だ。
「インスピレーションに従うままに描いて、気付いたら鳳凰ができてた。できた時に、自分はこういう作品を描くために導かれたんだろうなと思いました」
そうした作品が関係者の目にとまり、ペルシャじゅんたん絵師としてオファーを受けるなど活動の幅を広げている。
「音楽を聞かせた時よりも絵を見せた時のリアクションの方が圧倒的によかった」と、気まずかった親子関係にも変化があったという。
「父は描く対象を見ながら描くんですけど、ぼくはイメージを描く。『なんで空(空っぽの状態)で描くことができるのか俺にはわからない』と、ぼくの工程をすごくおもしろがってましたね」と父親譲りの人懐っこい笑顔を見せた。
そんな綱久氏が、次なる表現の場に選んだのはアクリル板だ。現在、Ao<アオ>ビルで6月に開催を予定しているアクリル板の展覧会の準備に取りかかっている。コロナ禍で感染対策のためアクリル板が至る所に設置されたが、「今は、人と人を隔てる存在だけど、(絵を描いた)アクリル板で人と人をつなげたい」。綱久氏の神獣たちはどんな世界へ導いてくれるのだろうか。
おぎの・つなひさ ロックバンド「ILL」を組み、ボーカリスト兼ギタリストとして活動。2015年に芸術家の草間彌生氏の作品に衝撃を受け、画家活動を開始。