不適切な言葉

 先日、立ち寄った弁当店での一こま。プラスチック製の弁当箱にごはんやおかずを詰めていくバイキング形式の店内で、30代とおぼしき女性の声が聞こえてきた。「そんなに詰めてどうするの。女の子のくせにはしたない」▲叱られていたのは小学校低学年ぐらいの女の子。好物がいっぱいで楽しくなったのかもしれない。一見、ほほ笑ましく、その家庭のしつけが垣間見える。が、この「女の子のくせに」は今、社会で使えない言葉の一つ▲森喜朗東京五輪組織委前会長の「女性がたくさんいる会議は時間がかかる」という発言から約1カ月半。「性差別を許さない」という声は加速度的に強まった。性差別を助長するような言葉に対して、社会はより敏感に反応するようになった▲新聞社にも性差にまつわる不適切表現について決まりごとがある。「女だてらに」「才色兼備」「男勝り」「夫唱婦随」-などは使用しない▲一方で小説やドラマ、歌詞などには、そんな言葉が多数存在する。確かに作家の「表現の自由」を主張する声は、今に始まったことではない。文学作品の中にも、われわれが使えない言葉が頻繁に出てくる▲新聞記者としても、制限が増えるのは苦しくもある。世につれ変化する言葉の是非に戸惑いながら、自らの語彙(ごい)力のなさを憂う日々が続く。(城)


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