戦争の歴史「風化が怖い」 茶道裏千家 前家元 千氏が田上市長と対談

平和の大切さや戦争体験の継承などについて田上市長(右)と対談する千氏=長崎市平和会館

 長崎県長崎市平和町の市平和会館で14日、「被爆・戦争体験者講演会」(茶道裏千家淡交会長崎支部主管)があり、茶道裏千家の前家元で戦争体験者の鵬雲斎千玄室(ほううんさいせんげんしつ)氏(97)=京都府=が田上富久市長と対談した。戦争や原爆など悲惨な歴史について「風化していくのが一番怖い」と述べ、平和の尊さを訴えた。
 千氏は大学生のころ、海軍に入隊。特攻隊に配属され、出撃前に終戦を迎えた。戦後、世界中で茶を通して平和の心を伝えている。対談では戦争体験の継承や海外への情報発信などについて意見交換。千氏は「悲惨な歴史を風化させないように若い世代、特に小中学生に伝えていかないといけない」と述べ、田上市長は「戦争を繰り返したくないという思いは世界共通」と語った。
 千氏は対談の前に「生きる力」と題して講演。特攻隊の訓練内容や出陣する仲間に茶をたてたこと、死を覚悟したこと、戦後の暮らしなどを紹介し「1わんの茶をもって和らごう。人生が少しでも『苦』から『楽』になるよう、互いに助け合おう」と語った。
 長崎の被爆者、山脇佳朗さん(87)も講演。兄と弟と一緒に父親を捜し歩き、遺体を焼いた壮絶な体験を語り「原爆は恐ろしいもの。まだ世界中にある核兵器をなくす運動を広げていく」と述べた。
 講演会は市の被爆75周年記念事業。昨夏開催予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期していた。同支部会員ら約400人が参加。同支部は今年8月、同館で「長崎平和祈念茶会」を開く。

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