30億年前の衝突クレーターではなかった? 2012年発表の研究を検証した成果

地球への天体衝突を描いた想像図(Credit: Don Davis)

ウォータールー大学のChris Yakymchuk氏らの研究グループは、グリーンランドのマニートソック地域で見つかった約30億年前のクレーターとされる構造について、天体衝突ではなく地球の地質活動によって形成されたものだとする研究成果を発表しました。

■天体衝突とは矛盾する分析結果

マニートソック地域のクレーターは、2012年にデンマーク・グリーンランド地質調査所(GEUS)の研究者らによって発見が報告されていました。直径約150キロメートルとされるこのクレーターは約30億年前に起きた天体衝突で形成されたとみられており、発見されたものとしては地球最古のクレーターである可能性が指摘されていました。

今回Yakymchuk氏らはマニートソック地域の地質年代学や同位体地球科学にもとづいた調査、一帯の岩石や河川堆積物から採取されたジルコンと呼ばれる鉱物5587個の分析などを通して、マニートソック地域にクレーターが存在するかどうかを検証しました。その結果、構造の中心付近で採取されたサンプルが熱による変成作用を経て再結晶化した時期は衝突が起きたとされる約30億年前よりも4000万年ほど後のことであり、ジルコンからは天体衝突の強い衝撃を物語る証拠が見つからなかったといいます。

研究グループは酸素の同位体比の分析結果や過去の空中磁気観測の結果なども含めて、マニートソック地域の構造が天体衝突ではなく地球の地質活動に由来するものと結論付けました。研究を率いたYakymchuk氏は「30億年前に起きた天体衝突の結果でなかったことは残念ですが、科学とは発見を通して知識を進歩させるものであり、地球史に対する人類の理解は日々進歩し続けています」とコメントしています。

なお、研究グループによると、今回の成果が正しければ現在までに地球で確認された最古の衝突クレーターはオーストラリアの「ヤラババ(Yarrabubba)・クレーター」となります。約22億2900年前に衝突クレーターとして形成された当時のヤラババ・クレーターの直径は70キロメートルだったと考えられており、長年の侵食を受けたことで地表には幅20キロメートルほどの痕跡が残されています。

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Image Credit: Yakymchuk et al.
Source: ウォータールー大学
文/松村武宏

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