全国「仏具店」の業績調査

 春分の日(3月20日)を前に、17日は春の彼岸入り。春と秋の年2回の彼岸は、例年、仏具小売店は仏壇周りの買い替え需要や法要の供物を求める客で賑わうが、昨年から様相が異なってきた。
 全国の仏具小売152社の最新期(2019年9月期~2020年8月期)の売上高合計は、515億6600万円(前期比4.4%減)と減少した。また、利益は前期の3億9100万円の黒字から、15億1100万円の赤字(同486.4%減)へ大幅に悪化した。2019年秋の消費増税に加えて、新型コロナウイルス感染拡大に伴う三密回避で法要や葬儀の縮小によるお供え品の販売減少が影響したとみられる。最新期での最終赤字は47社(構成比30.9%)と3割に達し、前期の27社(同17.7%)から1.7倍増となった。
 マンション等の住宅事情の変化、家族葬など小規模葬儀の広がりで、仏具販売は厳しい局面にある。そこにコロナ禍が襲いかかり、さらなる市場縮小も懸念されている。

最新業績 コロナ禍、消費増税が影響し赤字に

 全国の主な仏具小売152社の売上高合計は、前々期(2017年9月期~2018年8月期)が536億2600万円、前期(2018年9月期~2019年8月期)が539億6100万円、最新期(2019年9月期~2020年8月期)が515億6600万円と低迷している。
 売上高は、前期は消費増税(2019年10月)前の駆け込み需要効果もあって前期比0.6%増となった。仏壇や周辺の装飾具の高価格帯商品や消耗品を中心に、先を見据えたまとめ買いも寄与し、売上を押し上げた。
 だが、最新期の売上高は前期比4.4%減で、利益は15億1100万円の赤字に転落した。赤字は152社のうち、47社(構成比30.9%)に達し、前期の27社(同17.7%)から1.7倍増となった。  仏具小売業界は、増税前の駆け込み需要の反動に加え、コロナ禍で環境が一変した。“新しい生活様式”の浸透で葬儀の規模縮小や法要の延期・自粛が広がり、線香やろうそくなどの供物を店頭で求める人も減少した。
 また、葬儀の縮小は仏具販売と葬儀施行を一体で行っている事業者ほど影響が大きく、家族葬を主力に展開する一部業者を除き、経営環境は厳しさを増している。

仏具の黒字赤字

最新期は赤字企業が3割に

零細・中小事業者が9割

 売上規模別では、1億円未満が102社(構成比67.1%)、1~5億円未満が36社(同23.6%)、5~10億円未満が7社(同4.6%)で、売上高10億円未満の零細・中小事業者が95%以上を占める。
 売上高10億円以上の大手7社の売上合計は、最新期で359億500万円に達し、7社で全体(152社)の69.6%と約7割を占めており、大手の寡占状態が鮮明になっている。

休廃業・解散が高水準で推移

 2020年の仏具小売業の倒産は7件(前年比1件増)で、2018年から3年連続で増加をたどっている。ただ、2000年代は2002年(13件)、2003年(12件)、2007年(13件)と年10件超の倒産もあり、仏具小売の倒産は一服感もうかがえる。
 その一方で、休廃業・解散は2018年以降、高水準をたどり、年20件超で推移している。
 コロナ禍で大人数の葬儀や法要の自粛で、当分は業績回復が見込めず、業績不振と代表者の高齢化などで休廃業はさらに増える可能性が高い。

仏具の休廃業

‌休廃業・解散が高止まりしている


 全国の仏具店の売上高は低迷し、最新期は主な152社合計の最終利益は赤字に転落した。2019年秋の消費増税前の駆け込み需要の反動減に加え、コロナ禍での環境悪化が経営に大きく影響した。
 全国の仏具小売業者が加盟する全日本宗教用具協同組合(全宗協)では、「(新型コロナによる)影響は、高齢者の外出自粛が求められた2020年2月ごろにはすでにみられた」という。葬儀のほか、法事などの法要や彼岸参り、月命日といった供養行事は、高齢の家族が中心となって執り行うことが多く、店頭販売を主力とする小・零細規模の仏具小売業者を直撃している。
 特に、緊急事態宣言が発令された2020年4月から5月は、「東京ではほとんどの店舗が閉店していた」(全宗協)ほど、コロナ禍の影響が大きかった。
 経済産業省によると、2002年の宗教用具の小売業者は、事業者数が4886か所、年間商品販売額は2705億7000万円にのぼった。だが、2014年には事業所数が3004か所(2002年比38.5%減)、販売額も1639億4200万円(同39.4%減)に減り、市場は大きく縮小している。さらに、最近は仏具小売が本業でない業者がネット通販サイトで仏具や仏壇周りの商品を安価で販売するケースも散見される。
 コロナ禍で高齢者の外出自粛が定着し、店舗での販売は厳しい状況が続いている。さらに、ネット通販は広がりを見せ、全宗協は業界の課題として「インターネットでのPRや販路の構築が急務」と、従来の営業手法からの転換を求めている。ただ、“一生に一度、購入するかどうか”という仏壇の特殊性などもあり、価格競争だけでなく「心に適う商品提供の場作り」も今後課題となってくる。

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