子どもの気持ちを受け止める接し方のコツ

どうしてこんな行動をするんだろう、どうしてこんなことを言うんだろう……。子どもの気持ちを受け止めることが大切だとわかっていても、なかなか難しいですよね。子どもの自己肯定感を高めることにもつながる、気持ちの受け止め方について考えてみましょう。

子どもの視点で考える

「子どもの気持ちを受け止める」には、まず子どもの視点で考えてみることが大切です。

たとえば、子育てひろばに連れて行ったわが子が、オモチャ遊びに熱中。友だちがオモチャを貸してほしいと言っているのに、オモチャを貸してあげられないという場合。親としては、仲良くトラブルなく遊んでほしいと思います。また、友だちにオモチャを貸してあげられる心優しい子であってほしいという願望もあります。

ですから、「貸してあげなさい」なんて子どもに声をかけるのではないでしょうか。でも、たいていの場合「イヤ!」という言葉が返ってきますよね。

そんなときは、子どもの視点で考えてみましょう。あなた自身が「子どもの気持ちになって考えてみる」ということです。

自分が子育てひろばのオモチャで遊んでいる。わが家と違うオモチャを見つけて、わくわくしながら遊び始めたところ。そんなときに、友だちから「オモチャを貸してほしい」と言われる。

「え、今遊び始めたばかりだよ」「ボクが見つけたオモチャだよ」「ほかのオモチャで遊んだらいいじゃない」「なんでボクが貸してあげなくちゃいけないの?」「なぜ、ママはそんなに怖い顔で貸してあげなさいなんて言うのかな」など。いろいろな気持ちが湧き上がってくるのではないでしょうか。

そんな気持ちを受け止めてもらえず、「貸してあげなさい」なんて言われると、とても悲しい気持ちになりますよね。「ボクのワクワクした気持ちは大事にしてくれないの?」と思ってしまうかもしれません。

このように考えると、気持ちを受け止めずに子どもに指示することは、とても酷なことだと実感できるのではないでしょうか。

聞いてみなくちゃわからない

オモチャを貸したくない子どもの気持ちを、いくつかあげてみましたが、これはやはり子ども自身に聞くのが一番です。このときの会話のコツは、まず受け止めること。

「イヤだ」と子どもが言ったら、「イヤじゃないでしょ」と言いたくなります。でもここはグッと我慢して、子どもがもった気持ちを否定しないことが大切です。「そうか、イヤだったんだね」と、子どもの言葉を繰り返し、気持ちを受け止めたことを示しましょう。そしてそのあと「どうして?」と聞いてみることを心がけましょう。

子どもの言語発達にもよりますが、3歳前後の子なら、自分の気持ちを表現できるかもしれません。以下は、友人と3歳になったばかりのお子さんとの会話です。

「ねえ、おかあやん(お母さん)」と、寝る間際に娘が話しかけてきました。

「いつも残してごめんね」

「何を残してるの?」

「おみしる(お味噌汁)」

「明日から残さないで食べられるといいね」

「うん、わかった。しゅくなく(少なく)してね」

このお子さんは味噌汁を残してしまうことを悪いなと思って気持ちを伝え、友人はその気持ちを受け止めています。そして「少なくしてね」と子どもが解決策も示しているという、とても素敵な会話だなあと思いました。

なぜ受け止められないのか

とは言っても、「受け止める」ことはそう簡単ではありません。親の思いと違う言動をしていることを、「そう思ったんだね」と受け止めるには、親自身の心の余裕が必要です。

心の余裕がないと、子どもに対して心ない言葉で怒鳴りつけてしまうことも。「なんで貸してあげられないの!」「貸してあげなさい」「そうやって自分勝手に遊んでいると、友だちがいなくなるよ」など。命令的になったり、脅すような表現を使ってしまったりすることもあるのです。

このような言葉をかけてしまうのは、親自身のストレスの爆発によるものです。思い通りに動いてくれないことに苛立つと、つい強く言ってしまったり、指示型になってしまったりします。冷静になると「あのとき言いすぎたな」と反省するのですが、周囲の目や心と体の疲れなどがあると、ストレスを爆発させてしまうことがあるのです。

なるべく親自身が、ストレスを軽減しておくことも大事です。疲れていれば家事を手抜きしたり、睡眠不足だったら一時預かりなどを利用してお昼寝したり。自分の時間を作ってリフレッシュするのもいいですね。

気持ちと次の行動を分ける

子どもは自分の気持ちを大事にされると、自己肯定感が育まれます。自己肯定感が高まるおとによって、自分を信じることができ、前向きに生きていけるのです。

大切なのは、気持ちと次の行動を分けること。「オモチャを貸したくない」気持ちは大事にしつつ、ではどうしたらいいのかの解決策を相談します。お互いを尊重しながら、どうやって解決したらいいのか、コミュニケーションを取りながら折り合いをつけて行く方法を学ぶ。そんな繰り返しをすることで、子どもがぐんと伸びていくことでしょう。

著者紹介
高祖常子(こうそ・ときこ)

資格は保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級ほか。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事ほか各NPOの理事や行政の委員も務める。子育て支援を中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。著書は『男の子に厳しいしつけは必要ありません』(KADOKAWA)、『感情的にならない子育て』(かんき出版)ほか。3児の母。

これまでの【子育てアドバイザー高祖常子さんに聞く「イライラしない子育て」】は

© Valed.press