性悪説or性善説…組織マネジメントはどう考えるべきか

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。2月15日(月)放送の「オピニオンCROSS neo」では、明治大学大学院グローバルビジネス研究科教授の野田稔さんが“組織マネジメント”について述べました。

◆コロナ感染原因、不適切なら無給…

東京女子医科大学が職員に対し、新型コロナウイルスの感染で休んだ場合、感染の原因によっては休業中の給与を無給にするとの文書を出していたことがわかりました。文書では、「不適切な行為」で感染したと認められれば無給にするとしていますが、「不適切な行為」が何を指すのか示されておらず、職員からは「恣意的に運用される」との懸念の声が上がっています。

この件に関し、野田さんは開口一番「怒りしかない」と憤りを露わに。「東京女子医科大学の問題は、マネジメントサイドが従業員をどう認識するかによって引き起こされるもの」と言います。

そして、組織マネジメントにおいては性悪説と性善説があると示唆し、性悪説は「人はズルくてサボるもので欲深い。だから監視して罰を与えなければいけないというポリシーでマネジメントすること」。一方、性善説は「人は思いやり深く、マジメで善いことをする、だから信じて任せようというやり方」と解説。

また、"OCB”と"CWB”という2つ言葉を挙げます。OCBとは「組織市民行動(Organizational Citizenship Behavior)」と呼ばれるもので、組織のなかの人たちが立派で、思いやり深い人たちで溢れている会社は業績が著しく高いという研究成果のこと。逆にCWBは「非生産的業務行動(Counterproductive Work Behavior)」で、「簡単に言うと、悪いことをやるような人たちがたくさんいる会社ということ」と野田さん。

悪い人が多い組織はダメで、良い人が多い組織は良い、全ては個人の問題だと捉えられがちですが、「全然違う」と指摘。どういうことかというと、「タスク遂行」(業務パフォーマンス)には頭の良し悪しが50%、性格の良し悪しは6%関係しており、つまり「性格の良し悪しはパフォーマンスにあまり関係ない」と説明。そして問題は、先ほど例に挙げたOCB とCWBで、どちらも頭の良し悪しも性格の良し悪しも大して関係なく「要するに、良いことをするのも悪いことをするのも、個人責任ではないということ」と指摘します。

◆OCBとCWBと組織マネジメント

さらには善き人々に囲まれているとOCBは発生しやすく、どんな人でも良いことをし始めると野田さん。こうした雰囲気のことを「組織コンテキスト」と言い、「これを作るのはリーダーだと言われている」と力を込めます。

一方、ネガティブな経験が多いとCWBが発生しやすく、みんな悪いことをし始めると言います。さらに野田さんは、「罰なんかいくら与えても悪い行動は絶対に直らない」と明言。

これは論語でも「罰を与えても人の行動なんて良くならない」と同じようなことが論じられており、さらには「経営者が私利私欲を忘れ、社員のためにできることを全てやると示し、社員同士がお互いを思いやり、気持ちよく働けるように考えればみんなレベルが上がる」と声を大にします。

総じて、野田さんは「全ては経営者の責任。そのことを東京女子医科大学の先生方には勉強していただきたい」と言い、「キーワードは思いやり」と主張していました。

これには著述家の北条かやさんも同意。仕事のパフォーマンスには心理的安全性が大事というGoogleの研究を引き合いに、「発言が平等に聞いてもらえると思うと、人はパフォーマンスが上がる。でも、(経営者が)自分のことを信用せず、性悪説になると(社員は)貢献しようと思わない」と自身の見解を示していました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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