「なめていたのか」柏崎原発の“ザル警備”で問われる東電の隠蔽体質

震災から10年、体質変わらぬ東電

原発が乗っ取られてもおかしくなかった重大事態だったのか――。原子力規制委員会は16日、東京電力柏崎刈羽原発(新潟)で、不正侵入を検知する設備が長らく故障し、第三者が侵入できる可能性があったと発表した。原発施設はテロ対策のためにセキュリティーは最重要項目でありながら、あり得ない不手際が判明した形だ。未曽有の被害を出した福島第1原発事故から10年たっても東電の大甘・隠蔽体質は変わっていなかった。

昨年3月以降、柏崎刈羽原発で不正侵入を検知する設備が計15か所で故障し、うち10か所の代替措置が不十分と原子力規制委員会が指摘した。同委員会が下した核物質防護の安全評価は、4段階で最も深刻なレベルだった。

「実際の影響として、不法な第三者が侵入できる状況が長期間あった。原子力規制委員会が発足して以来、事案として全く他のこととは比較不可能」と同委員会の更田豊志委員長は声を震わせた。

原発施設はテロのターゲットになりうるため、セキュリティーは厳格に保持されているはずだった。原子炉建屋へのミサイルや爆発物での攻撃のほか、制御室が奪われ、原発のコントロール機能を失えば、大惨事を招きかねない。

福島第1原発事故のように、外部電源を失うことによって制御できなくなった例を受け、施設内すべてのセキュリティーレベルを上げる必要性に迫られれば、出入りするすべての人の犯歴、薬物依存の有無なども厳格にチェックし、コントロールすべきとの議論まであったほどだ。

原発を狙ったテロは、さまざまな小説や映画の題材になっているが、2015年に首相官邸にドローンを飛ばして逮捕された男はブログで、原発に侵入して破壊するまでの詳細なシミュレーションを公開していた。それでも当時は、施設内は高度な警備システムが敷かれており、侵入工作は荒唐無稽とされていたが、今回の問題発覚でまたも原発の“安全神話”はウソ八百だったとなる。

さらに深刻なのは東電の大甘・隠蔽体質だ。再稼働を目指している柏崎刈羽では、発電所員が昨年9月に同僚のIDカードを使って中央制御室に不正入室していたことが発覚し、再稼働の観点などから問題視されたばかり。

今回の設備故障でも東電は代替措置を取っていたというが、委員会側が抜き打ちチェックしたところ「東電は(検知設備は)部分的に落ちているが、残りは生きているという説明だった。実際に試したら残りの部分も生きていなかった」と実効性がないお粗末極まりない状態だったという。

防護設備の機能喪失は18年1月から20年3月にも複数箇所で発生していたといい、更田氏は「知識不足によるものか、なめていたのか、わかっていて放置したのか。いくつかの不具合が並行して起きていて、大きな背景がなければこんなことにならない」と東電の体質に問題があるとして、今後、行政処分も含めて、検査を進めていくとした。

防災アナリストの金子富夫氏は「あれだけの世界的な重大な事故を起こしたのに結局、危機管理の意識は低く、何も変わっていない。教育的には原発管理の重大さや危険さは頭にあっても、本当の意味で分かっていないのでしょう。すべてにたけた現場監督責任者もいない」と東電のずさんな管理態勢を斬った。

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