「どんちゃん騒ぎ」で銃殺も…春の訪れで北朝鮮当局が警戒

北朝鮮に春がやってきた。韓国気象庁の予報によると、平壌の最高気温は今週以降概ね10度以上、19日には18度まで上がることが予想されているなど、北部山間部を除きポカポカ陽気が予想されている。

そうなれば、人々の考えは何処も同じ。満開の桜の下や緑の戻った草原で飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ。娯楽が少なく、酒好き、踊り好きのお国柄だけあって、家族や職場単位でのピクニック、宴会があちこちで繰り広げられる。

そんなことはお見通しを言わんばかりに、北朝鮮当局は早々と釘を差した。
新型コロナウイルスの国内拡散に神経を尖らせている当局は、住民に対してどんちゃん騒ぎを厳しく戒めた。

デイリーNKは北朝鮮現地の情報筋を通じて「住民政治事業資料 朝鮮労働党第8回大会の精神を高く奉じ、国境秩序と非常防疫戦の妨げとなる行為との闘争を強力に繰り広げよう」と題された内部資料を入手した。住民を対象としたコロナ対策教育の資料は、このような文章から始まる。

今、道内の全人民たちは、朝鮮労働党第8回大会で提示された戦闘的課業を高く奉じ、自力更生、自給自足の旗高く、道の経済発展と人民生活向上のための闘争をう果敢に展開している中で、非常防疫戦をさらに強力に繰り広げている。

しかし、われわれの周りでは、未だに激動する時代に背を向け、自分ひとりの利益だけを追求して、国境秩序を違反し、非常防疫戦に妨げになる現象がなくなっていない。

※金亨稷(キムヒョンジク)郡の地境里(チギョンリ)にある道探査管理局風船地質探査隊のリム某は1月12日、従業員と家族を集めて酒の席、会食を行った。

※恵山(ヘサン)市の塔城洞(タプソンドン)に住むシム某は1月31日、封鎖と自宅隔離に自主的に参加することについての教養事業を受けたのに、複数の人を呼び飲んで食べて、歌って踊り、非常防疫事業に逆行するむちゃくちゃなことした。

封鎖期間の生活上の困難を抱えた人、苦しんでいる人たちを助け、慰めて集団主義の気風を高く発揚し、一つの大家庭を成した我が社会の風貌を余す所なく発揚されるようにしなければならない。

この資料が配られた両江道を始めとする国境地域では、昨年来封鎖令(ロックダウン)が繰り返し下されている。外出が禁じられた状態で食糧が底をつき、餓死する人が相次ぐなどして、市民の不満が高まっている。「共助」でそんな不満を少しでも抑えようという意図が感じられなくもない。

しかし、「公助」がほとんど行われていない状況で、「自助」や「共助」を求める今回の資料は、評判が悪い。当局は食糧配給もしないくせして、慰め合って危機を克服せよというばかりで、呆れて物が言えないとのリアクションが出ていると情報筋は伝えた。

© デイリーNKジャパン