【センバツ】球児の熱闘、声で支える 夢かなえ甲子園の場内放送担当に 大和東高出身・稲本さん

甲子園球場の放送担当として初の選抜大会に臨む稲本さん(阪神電鉄提供)

 2年ぶりの開幕を控える第93回選抜高校野球大会。聖地に響く球音を心待ちにしているのは選手だけではない。「明るい放送で一緒に盛り上げていきたい」と目を輝かせるのは甲子園球場のアナウンス担当・稲本安里紗さん(26)=大和東高、関東学院大出身=。自身も夢をかなえた一人として、球児の熱闘を陰で支える。

 声の仕事に携わって5年目。並々ならぬ思いがある。「高校野球といえば春夏の甲子園。待ち遠しいけど、緊張もする」。19日からの計31試合、他のスタッフとともに場内放送を担当する。

 「甲子園で活躍する選手の姿を声で伝えているリポーターが格好よかった」。高校、大学で硬式野球部のマネジャーを務め、試合のアナウンスを担当したことがきっかけだった。

 就職活動ではテレビ、ラジオ局など約100社を受験。2017年春から2年間、福島のラジオ局に勤務した後は独立リーグ・茨城の球団職員としてホーム球場でキャリアを積んだ。

 だが、「やっぱり高校野球に携わりたい」と19年11月、阪神電鉄に入社し甲子園事業部に配属。昨春の選抜大会は新型コロナウイルスの影響で中止となり、念願のデビューは夏の甲子園交流試合だった。

 試合を重ねることで成長するのは選手と同じ。心に残っているのは大会最終日の東海大相模─大阪桐蔭戦という。

 それまでの3試合では選手の名前を引き立たせる読み方ができず落ち込んでいたが、「試合を引っ張っていく気持ちで、反省点を生かして楽しもうと思った」。手に汗握る好ゲームを終始落ち着いた発声で支え、自信をつかんだ。

 試合間隔が短い高校野球ではスムーズな進行が求められる。今年は感染症への注意喚起の原稿も更新された。「自分なりに言葉の意味や重要性を詳しく理解するために」と原稿にマークをつけて持ち歩き、アマチュアの試合やプロ野球・阪神の2軍戦で経験を積んだ。

 担うのは球春到来を告げる歓呼の声。稲本さんはこう意気込む。「選手にとって一生に一度の舞台。一人一人の名を残せるように送り出したい」

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