「永田町残酷物語」そろそろ昔話に 与野党の女性議員インタビュー

 女性の政治参加の面で日本は諸外国に大きく後れを取る。「政治は男性のもの」という偏った見方、地元と永田町の往復を続ける国会議員の働き方、家庭との両立―。共同通信が実施した全女性国会議員へのアンケートでも浮き彫りになった、立ちはだかるさまざまな「壁」を、現職の女性政治家はどう見ているのか。自民党の野田聖子幹事長代行は日本で初となる女性首相を目指し活動する。国民民主党の伊藤孝恵副代表は子どもを連れて出勤するために議員会館にキッズスペースをつくった。与野党の2人に聞いた。 (聞き手 共同通信=梅岡真理子)

議員会館の自室にキッズスペースを設けた国民民主党の伊藤孝恵氏

◇野田聖子氏「党の体質改善が必要」

 岐阜県議を経て、1993年に衆院初当選しました。自民党の同期で女性は1人。後から田中真紀子さんが入党しました。今、自民党の衆院議員の女性割合は約7%。相談相手はできたのかなと思います。

 自民党は女性議員が少ないと言われますが、いくつかジレンマがあります。まず、党の歴史が長く、地方組織や個人の後援会を大事にします。公認候補は地方組織が決めた人が大前提。党本部主導で方針を決めても、必ずしも従うというわけではありません。ただ、地方組織の選考は男性が多いこともあり、党の体質改善は必要です。

インタビューに答える自民党の野田聖子氏

 ▽当選続けることが大事

 昨年12月に、二階俊博幹事長と山口泰明選対委員長から都道府県議会に対し、地方議会に女性議員を増やす取り組みをお願いする文書を送りました。市町村議会には少なくとも1人は女性議員がいる状況をつくるべきだとしています。定数割れになる議会にも積極的に女性が立候補できればと思います。

 以前は出馬する女性を探すのが大変でした。現在、政治を志す女性に向けた女性未来塾を開き、準備ができている約50人のリストがあります。女性候補者をシンボルとするのではなく、当選し続けられることが大事です。今年行われる衆院選は現時点で空白の選挙区はほぼありませんが、地味でもじわじわと増やしていきます。

 ▽「おじさん化」せず、身の丈で

 今政治家を目指す人には男女問わず「政治家ぶらず、そのままでいい」と伝えています。私が20~30代のころ、「政治は男性のもの」と考える人も多く、「おじさん化」しないと、有権者に信頼してもらえないと思い込んでいました。出産を経た今は「もっと身の丈でやればよかった」と思うのです。同じような人ばかりでなく、多様性がある中で政治をやるべきでしょう。

 議員生活では、無派閥だったので「派閥の壁」も大きかったです。自民党総裁選に出たいと思っても20人の推薦人をそろえることができませんでした。

 野党は、女性議員を増やすためにクオータ制(人数割当制)が必要だとしていますが、現在の制度で導入しても、それほど効果が出ないので、選挙制度の議論が必要になります。クオータ制を入れても、女性議員が少ししか増えないのでは意味がない。確実に増やしていくためには、まずは各党がそれぞれ独自の取り組みを進めていくべきでしょう。

左:野田聖子氏 右:伊藤孝恵氏

◇伊藤孝恵氏「24時間戦えなくても」

 2015年、次女を出産した際、耳の障害の可能性を指摘されました。娘のために制度や法律を調べるなか、参院選の候補者を募集するサイトの「政治家は子どもたちの未来をつくることができる」という言葉が目に留まったのが、出馬のきっかけです。

 選挙に必要といわれる「地盤、看板、カバン」がない中、愛知選挙区民進党2人目の候補になりました。何も知らず飛び込んだ選挙活動は途方に暮れるばかり。家族と知人に頼った選挙戦では「子どもがいるのに選挙に出るなんて」「誰も応援していないから」と非難されました。

 ▽子どもと過ごせない

 当選後、また違う壁にぶつかりました。会社員の夫と協力していますが、国会での活動、選挙区での活動、家庭を両立するのは至難の業です。平日は朝8時から党の会議、国会、夜の会合。週末は地元回り。コロナ禍以前は週末を子どもたちと一緒に過ごしたことがありません。

 それでも、なんとか後輩たちが歩きやすいように永田町ジャングルをブルドーザーで開拓してきました。子連れ出勤のために、議員会館の自室にキッズスペースをつくると批判が殺到しましたが、今では子連れの来客が増えました。

 超党派のママパパ議員連盟をつくり、子育て施策のほか、議員活動との両立問題にも取り組んでいます。10歳未満の小学生を連れて参院本会議を傍聴できるよう、2年以上かかってルールを変えました。

 ▽普通の暮らしを知る人が政治家に

 新たなことにチャレンジするたびにたくさん批判を浴びてきましたが、もう、そろそろ『昔はそんな永田町残酷物語みたいな話があったね』と笑い話にしたいです。24時間戦えなくても、普通の暮らし、働く人の感覚、実態を知る人が政治家になるべきだと思っています。

 政治家だからこそ、できたことはたくさんあります。議員立法では、視覚障害や発達障害のある人たちが読書しやすい環境を整える読書バリアフリー法と、第三者が絡む生殖補助医療で生まれた子の親子関係を明確にする民法の特例法を成立させました。

 過去の国会議事録を読むと、戦後から先輩の女性議員たちが、道を切り開いてくれていることが分かります。はじめの一歩はとても過酷だけれど、間違いなく尊いものです。

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