映画『BLUE/ブルー』(吉田恵輔監督作品)完成報告会で主演の松山ケンイチが2年の役作りを経て初めて演じたボクサー役について熱く語る

吉田恵輔監督が監督・脚本を務める挑戦者たちの熱い生き様を描いた映画『BLUE/ブルー』が4月9日(金)より公開。その完成報告会が3月17日(水)に神楽座で行なわれ、主演の松山ケンイチ、共演の木村文乃、東出昌大、柄本時生、そして吉田恵輔監督が出席した。

ボクシングを愛するも連敗続きのボクサー・瓜田役の松山は

「ボクシング映画というと再起している様が感動的に描かれる作品が多いけれど、今回は…再起しません!」

と異色ぶりを宣言しつつ、

「でも負け続けたからこそ得られるものもある。瓜田は人に優しく、包容力がある。そんなキャラクター」

と紹介。

瓜田の幼馴染であり、後輩・小川の恋人・千佳役の木村は

「皆さんストイック中のストイック。それぞれ撮影前からジムに通われていたので、カメラが回っていない場所でも3人でボクシングについてアドバイスし合ったりなど、本当に劇中のような会話をされていたんです。そんな皆さんを眺めるような感じで、もどかしくもあり、少し寂しい気持ちもありましたね」

と男たちを見守るヒロイン役を回想した。

抜群の才能とセンスでチャンピオン目前のボクサー・小川役の東出は

「撮影中は実際にボクサーのような生活をしていたし、後楽園での撮影の日はタイトルマッチの日だとも思っていました。吉田監督がボクシングにリスペクトを持っているので、キャスティングも本格的で、前日本チャンピオンが対戦相手として登場したりしたんです。それに見劣りしないよう意識しました」

とボクサーへのなりきりぶりを明かした。

ボクシングの魅力にのめり込む新人ボクサー・楢崎役の柄本は

「痛いのは嫌です。でも格闘技には興味があったし、ボクシングもかじったことはあったので、楽しめそうだと思いました。実際に撮影も楽しかったです」

と充実した表情を浮かべた。

30年以上続けてきたボクシングを題材に、自ら脚本も書き上げた吉田監督は

「ジムを渡り歩いてきた中で、いろいろな人たちとの出会いや別れがありました。すべてのキャラクターにはモデルになった人が複数いるので、僕がボクシングを通して出会った人たちへのラブレターのような気持ちで作りました」

と積年の想いが詰まった入魂作であると語った。

約2年のトレーニングを経て撮影に入ったという松山は

「観客に嘘がバレるのが一番ダメなこと。監督の演出に耐えられるような準備はしました。スケジュールの兼ね合いで2年もトレーニングをしたけれど、瓜田はボクサーでありトレーナーでもあるので、“ジムの主(ぬし)”感と言いますか、ジムにずっといる重鎮のような空気感を習得するには必要な時間でした」

と手応えを得ていた。

また、弱い瓜田が劇中でチャンピオン目前の小川に「瓜田は強い」と言われていることについて、その“強さ”とは何か問われた松山は

「瓜田は小川や他のボクサーに対して嫉妬や妬みといった気持ちがないわけではない。それでも、周りの人たちに自分が培ってきたものを全て渡すことができるんですよね。そこに人としての強さ、人間の大きさを感じました」

と語った。

さらに、見どころの一つである切ない人間模様や瓜田・小川・千佳の三角関係について、

「千佳と瓜田のシーンを通して、強さと弱さってごちゃ混ぜにあるものなんだなと感じました。強くも弱くも見えるという場面がこの作品にはたくさんあって、僕が好きなところです。観る人によっても感じ方が違ってくると思います」

と本作の魅力を伝えた。

そして、映画の内容にちなんでそれぞれ「挑戦していること」について聞かれた4人。柄本は

「一人カラオケができるようになった!」

と笑わせ、木村は

「丁寧に生活すること。これまで仕事が忙しすぎて見て見ぬふりをしていたことがたくさんあったので、そこにあえて目を向けて手をかけて生活してみようと挑戦中です」

とプライベートの充実を口にしてた。東出は

「独特なんですけど…ザワークラウトです。キャベツの酢漬けのようなもので、キャベツを千切りにして瓶に入れると1週間くらいで発酵して酸っぱくなってビタミンが豊富になる。ビタミンをたくさんとりたい。まぁ、挑戦と言えるのかわからないですけど」

と照れ。すかさず吉田監督から

「モデルの女の子みたい!」

とツッコまれていた。一方、最後まで悩んでいた松山はスマホのアプリで大喜利に挑戦していることを告白。

「面白い男になりたいなと思って。“写真で一言”のようなお題でボケまくっています」

と意外な趣味を語った。

最後に主演の松山は

「ボクサー3人が主人公のようなキャラクターで、それぞれの熱さも違う。関係性も凄く新鮮。女性にも共感してもらえるボクシング映画です」

とアピール。吉田監督も

「こんなに嘘をついていないボクシング映画はありません。ボクサーが見たらたくさんのあるあるが詰まってる。人生で負けることはみっともないことではなく、美しいかもしれないと感じられるラブレターのような作品になっています」

と思いを込めて語った。

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