単独飼育のサルが妊娠出産 飼育員も「なぜ?」 佐世保・森きらら

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モモのお腹にしがみつく赤ちゃん=佐世保市、森きらら

 長崎県佐世保市船越町の九十九島動植物園(森きらら)で先月、飼育中の雌のシロテテナガザルに赤ちゃんが誕生した。本来、おめでたい話題なのだが、今回は少し事情が異なる。母親モモは繁殖を避けるため単独飼育中だったからだ。飼育員にとっても「青天のへきれき」の出来事だった。
 同園によると、モモは2010年7月に生まれ、現在10歳。同じ展示場の中で両親と妹の4頭で暮らしていたが、生殖可能な状態になる「性成熟」をした約5年前から、父親との近親交配とならないよう家族と離れ、単独飼育されていた。
 2月10日午前9時ごろ。飼育員がモモに餌を与えようと寝室に入ると、モモが赤ちゃんを抱いている光景が目に飛び込んできた。「夢かと思った」と飼育員。シロテテナガザルは一般的に妊娠してもおなかがあまり大きくならないため、外見上妊娠が分かりにくいのだという。
 単独飼育のモモがどうして妊娠したのか。
 テナガザルは、三つ並んだ獣舎で展示されている。獣舎間は鉄柵と鉄網などで仕切られ、各獣舎には展示場と寝室がある。モモは真ん中の獣舎。同じ獣舎内に、雄のアジルテナガザルもいたが、午前と午後で展示場と寝室を入れ替える形で飼育・展示され、接触できないようになっていた。
 妊娠経路として想定されているのは3パターン。一つめは、左の獣舎で飼育されているフクロテナガザルの雄2頭のどちらかと交尾した可能性。二つめが、右の獣舎にいるモモの父親。そして三つめが、同じ獣舎のアジルテナガザル。しかしいずれにしても、鉄網やパンチングボード、板で区切られており、隙間はわずか0.5センチ~1センチ。生殖に「困難な状況」だったことには間違いない。

三つ並んだテナガザルの獣舎。鉄柵や鉄網などで区切られている=佐世保市、森きらら(同館提供)

 現在、モモは授乳をするなど献身的に子育てに励んでいる。赤ちゃんも今月、展示場デビューをした。赤ちゃんは性別不明。同園は乳離れをする1、2歳時にDNA鑑定をして父親を特定する予定。
 園を慌てさせたモモの予期せぬ出産。岩岡千香子園長は「今まで以上に繁殖管理の環境を整える」としつつ「授かった大切な命なので、他の子同様かわいがっていく」と話す。
 同園を訪れた同市星和台町の主婦、江頭友子さん(65)は「こんな環境でも妊娠できるなんて、めでたい。幸運を運んできてくれるお猿さんですね」と笑顔で話した。