オジーに仕えたギタリスト、ランディ・ローズの奏でるほんとうに貴重な音 1987年 3月19日 オジー・オズボーンのライヴアルバム「トリビュート~ランディ・ローズに捧ぐ」がリリースされた日

1982年、飛行機事故で帰らぬ人となったランディ・ローズ、享年25

少年はナルシソ・イエペスをめざす。

生涯ロックに無縁という不幸としかいいようのない人種は別として、中高時代にロックの洗礼を受けた少年なら、必ず一度はギターに憧れる。

いかにもな格好でギターを構え、左手でネックを押さえて右指で弦を弾く。音が出たら、早速ドレミでは満足できない。その瞬間、少年が陥る罠がナルシソ・イエペスの「禁じられた遊び」だ。

ピアノの初心者が「ネコふんじゃった」に燃えるように、ギター少年はあの陰鬱なメロディに命をかける。これはもう、誰もが通る踏み絵だ。未だかつて、それを避けて通れた少年はいない…。

「禁じられた遊び」をクリアした80年代の少年は、やがてハードロックに魅せられる。ギブソン、レスポール、ストラトキャスターを揃え、リッチー・ブラックモアをカバーしてはヴァン・ヘイレンのライトハンド奏法をまね、明けても暮れてもイングヴェイ・マルムスティーンの超速弾きを練習する。

でもハードロックは美学だ。ギタリストはテクだけじゃない。

僕の中学時代、甘い容姿と超絶技巧で人気だったのが、オジー・オズボーンのギタリスト、ランディ・ローズである。肩までかかる金髪、端正な顔立ち、絵に描いたようにスリムな美男子。だが佳人薄命。1982年、飛行機事故で帰らぬ人となる。享年25。

血や黒魔術などヴィジュアル面でも奇人変人ぶりを発揮していたオジーとは対照的に、もの静かで、古典ギターの練習に余念のなかったランディはハードロックギター少年の憧れだった。

これもハードロック? ギターだけのインスト曲「ディー」

実際に僕がリアルタイムで聴いたのは、ランディ時代のシングルやB面、ライブ音源と、次のギタリストであるジェイク・E・リーの数曲をまとめて日本で独自編集された『ジ・アザー・サイド・オブ・オジー』と、ランディ時代のライブ盤『トリビュート~ランディ・ローズに捧ぐ』だった。

その頃にはもちろん後追いで、オジーの『ブリザード・オブ・オズ~血塗られた英雄伝説』も聴いていた。このファーストアルバムの中で、オジーの世界全開な曲の合間に、1分にも満たないギターだけのインスト曲「ディー」が挿入されていて驚いた。

これもハードロック???
? が三つ付くくらいびっくりした。

スタジオ・アウト・テイク「ディー」で思い浮かぶ、ひたむきな練習風景

掃き溜めに鶴か、紅一点。そんな風に驚く少年をさらに仰天させたのが、『トリビュート~ランディ・ローズに捧ぐ』に収録された「ディー」のスタジオ・アウト・テイクだった。残念ながらギター少年になれなかった僕には、そのテクが高度なのか独創的なのか、正直よくわからない。

でも、ランディ伝説をインプットした後で「ディー」のアウト・テイクを聴くと、美しいメロディとコード進行に加え、「悪くないな(Not bad)」なんて声から、彼のひたむきな練習風景が浮かんできて、貴重な、ほんとうに貴重な音というものがあるんだな、なんて、今更ながらに目頭が熱くなる。

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※2016年6月13日、2018年12月6日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: ジャン・タリメー

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